2018 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス状況下における記憶処理メカニズムの解明:臨床的応用可能性へ向けて
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17J06690
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
林 明明 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所, 特別研究員(PD) (90726556)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 学習後ストレス / ホワイトノイズ / TSST / 虚記憶 / 連合記憶 / 意図記憶 / 単語 / 感情 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の続きとして研究1の参加者を増やし、計61名を対象にノイズストレスが偶発記憶・虚記憶へ及ぼす影響を検討した。観測された主観的ストレス値の平均値に基づいて、ストレス群およびコントロール群それぞれについて、さらに主観的ストレス値の高群と低群に分けた。分散分析の結果、主観的ストレスの高低には有意差があったが、ストレス負荷による主効果は認められなかった。しかし、虚記憶(未学習のルアー項目に対してRemember反応をしたもの)については、深い処理をした条件においてのみ、ストレス負荷の有無による違いが認められた。ストレス群では、主観的ストレスの低い群のほうが主観的ストレスの高い群より虚記憶が多く、反対に、コントロール群では主観的ストレスの高い群のほうが主観的ストレスの低い群よりも虚記憶が多かった。 同じ研究1と虚記憶の刺激を用いて偶発学習後に社会的ストレス課題であるTrier social stress test(TSST)もしくはコントロール課題を実施した。キー押しの判断は深い処理である単語の意味が参加者にとって快か不快かのみの判断とした。約24時間後である翌日、参加者は再度実験室へ来室し、前日の記憶に関する再認テストを行った。その上、連合記憶を検討するため、顔写真とそれぞれの名前、職業を覚える連合学習課題について、同じくストレス後約24時間の遅延の効果を検討した。これら2つの実験については現在順調に参加者を増やしている。また、40名を対象に漢字の二字熟語の感情の効果を分析した研究では、再生成績では、ニュートラル語においてストレス群はコントロール群より24時間経過による再生記憶の低下が少なかった。ポジティブ・ネガティブの感情語では両群の差はなかったが、社会不安傾向を測定する質問紙の得点が、ネガティブ語の再生記憶の低下と有意な相関を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は実験参加者を順調に増やし、虚記憶および連合記憶に学習後ストレスが与える影響を検討している。ストレスの種類もノイズストレスと社会的ストレス課題の複数のストレスを用いて検討できている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はまず研究2のつづきとして、非意図的記憶とストレス反応としての自律神経機能の心拍の測定を行う。さらに、本年度はストレスホルモンの測定を行う予定である。参加者をストレス群およびコントロール群に分け、ストレス群にはストレス負荷課題を課す。ストレスには社会的ストレスを用いる。さらに、社会的ストレスのコントロールとなる、社会的ストレスを受けないスピーチ課題を用いて、そのコントロール課題としての妥当性についても検討する。非意図的課題として単語偶発学習課題を行い、24時間後の再認記憶を確認する。研究3として、顔刺激を用いて、人物の顔・名前・職業を連合させて記憶する日常記憶課題を用いる。さらに、再固定手続きを用いて、ストレス記憶緩和のための実験手続きの検討を行う。
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