2017 Fiscal Year Annual Research Report
A Study of Approximation and Transformation of Markov Processes and their Applications to Credit Risk Management
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17J06948
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
KEVKHISHVILI RUSUDAN 京都大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 資産モデル / 同時倒産確率 / 業界相関 / 線形拡散過程 / 最終通過時刻 / 時間反転 / レジームスイッチ / 最適停止問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、マルコフ過程の近似及び変換の理論を研究し、本研究の目的を達成するために重要な実務及び理論的基礎を与える下記の成果を得た。 1. 異なる業界の企業を同時分析できる構造型クレジットリスクモデルを構築した。本モデルは、企業資産の動学によって同時倒産確率を与えている。資産モデルには、企業固有リスクと全ての企業に共通のショック過程を導入し、全ての企業固有リスクはショック過程と独自の相関を持つと仮定した。このように、モデルに業界相関を含めた。更に、マルコフ過程による近似を用いて、企業ごとに資産モデルパラメータを推定する方法を確立した。本モデルは計算負荷が小さく、任意の有限個の企業の同時分析を可能にする。 2. 企業債務状況を代表する変数が安全レベルから逸脱し、倒産へ向かう状況を分析した。そのため、一般的な線形拡散過程について、ある点の最終通過時刻とその時刻から消失までの残存期間の分布を導出した。この成果はレバレッジ比率へ応用し、「クレジットリスクが高い領域」とそうでない領域の境界点の最終通過時刻と、債務超過までの残存期間の分布を陽に求めた。また、上述の境界点を、企業価値観点からみた最適な水準として与える最適化問題を設定した。倒産した企業を実証分析した結果、上述の成果はクレジットリスク管理上有益な情報を与えることが判明した。 3. マルコフ転換を含む最適停止問題の一般的な解法を確立した。現在、この分野の研究では、問題を解く方法として、数値計算法による近似あるいは特殊問題にのみ適用可能な代数法だけが提案されている。それに対して、本研究では、価値関数と最適停止時刻を陽に求めた。本研究の方法は、幾何学的解法に基づいており、容易に最適停止政策が決定できる。上述の成果を応用し、数値計算法と代数法では解けない、永久キャプ付コールオプションの価値を与えるレジームスイッチ最適停止問題を解いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、一般的なマルコフ過程の理論研究を通じて、業界相関を考慮したクレジットリスク計量手法と、CDSスプレッドモデリング方法を考案することを目的とする。平成29年度は、一般的なマルコフ過程に関する新しい理論結果を得て、論文2本を完成させた。これらの結果によって、研究目的を達成するために必要な実務及び理論的基礎を確立した。更に、本年度作成した全てのモデルは一般的な拡散過程を状態変数とするため、倒産確率と関連する変数のモデリングへ幅広く応用可能である。「研究実績の概要 2.」の研究内容は“An Application of Time Reversal to Credit Risk Management”(Masahiko Egami, Rusudan Kevkhishvili)という論文にまとめて、多くの研究会で報告した(「学会発表」参照)。「研究実績の概要 3.」の研究内容は、“On the Optimal Stopping Problem of Linear Diffusions in Regime-switching Models”(Masahiko Egami, Rusudan Kevkhishvili)という論文にまとめた。この論文は2018年6月11-15日に開催されるThe 40th Conference on Stochastic Processes and their Applications-SPA 2018(於 Gothenburg, Sweden)と2018年6月25-27日に開催されるThe 30th Asian Finance Association Annual Meeting(於 東京)に報告論文として受理されている。現在、この論文2本の査読付学術誌への掲載に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通り、「研究実績の概要 1.」のモデルを使って、2004年以降の同時デフォルト確率の推移を詳しく研究し、業界相関を考慮しないモデルとの比較を行う方針である。ここで作成した企業資産モデルは、一般的な拡散過程から構成されているため、CDSスプレッドのモデリングへ拡張可能である。今後、このモデルを使って、CDSスプレッドの動学と業界相関の関係を分析する予定である。2008年のリーマンショックの際に観察されたCDSスプレッドの上昇に重点を置き、スプレッドの上昇と関連するパラメータを特定することに取り組む。また、CDSスプレッドを状態変数とするレジームスイッチ最適停止問題を設定し、問題の解を研究することによって、2004年以降のクレジットリスクの変化を分析する。本年度得られたマルコフ過程に関する理論結果をまとめた論文2本の査読付学術誌への掲載を目指すとともに、これらの結果の発展可能性について考える。
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Remarks |
上記の通り、論文2本をarXiv.org上で公開した。 ワーキングペーパー1“An Application of Time Reversal to Credit Risk Management” ワーキングペーパー2“On the Optimal Stopping Problem of Linear Diffusions in Regime-switching Models”
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Research Products
(11 results)