2017 Fiscal Year Annual Research Report
Biomedical swimming micro robot
Project/Area Number |
17J06966
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山中 俊郎 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | マイクロロボット / マイクロスイマー / バイオ燃料電池 / マイクロ流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,生体医用ロボットに適した新規のマイクロスケール推進泳動機構を提案・開発し,そのコンポーネントとしての有効性を実証し,その産業価値を明確にすることを目的としている.具体的には,泳動推進機構を100μm以下で製作し,自己推進速度30μm/sを達成する.目的達成のため次の4項目,1.泳動推進原理の実証,2.マイクロスケールプロトタイプの製作,3.推進速度評価,4.設計論の構築・産業応用への可能性の提示,を実施する計画である. 本年度は上記実施項目のうち1~3を実施・完了した.まず,これまでにないコンセプトとして,生体で供給可能な物質であるグルコースと酸素を酸化還元し電位差を生成するバイオ燃料電池と,その電位差によって発生する電気浸透流の反作用により自己推進する自己電気浸透推進機構とからなるマイクロ泳動ロボットを考案した.マイクロ流体理論に基づき,この自己推進速度の物理モデルを導出し,マイクロスケールで特に有効な原理であることを理論的に示した.次に標準的なフォトリソグラフィによって約100μmのマイクロスケールプロトタイプを製作し,これを用いた推進速度評価実験を実施して,最大推進速度35μm/sを達成した. 既に上記4の着手を開始した. 本年度の成果公開については,査読付き国内学会発表1件を実施した.また,査読付き外国語論文誌に1件投稿し,掲載が確定した(電子版公開中,7月掲載予定).また,本研究の推進原理について国内特許1件の出願を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度では,実施項目1.泳動推進原理の実証,2.マイクロスケールプロトタイプの製作,3.推進速度評価,を実施する計画であった. まず,これまでにないコンセプトとして,生体で供給可能な物質であるグルコースと酸素を酸化還元し電位差を生成するバイオ燃料電池と,その電位差によって発生する電気浸透流の反作用により自己推進する自己電気浸透推進とからなるマイクロ泳動ロボットを考案した.バイオ燃料電池は液排出用貫通孔を備えた酸化還元電極対から構成され,電気浸透推進機構は2電極間に配置された絶縁管から構成される.マイクロ流体理論に基づき,この構成における自己推進速度の物理モデルを導出し,マイクロスケールで特に有効な原理であることを理論的に示した.マイクロスケールプロトタイプは,酵素を固定した銀微粒子とフォトレジストSU-8とを混合した導電性コンポジットでバイオ燃料電池の電極対を構成し,フォトレジストSU-8で電気浸透推進機構の絶縁管を構成する.この構成について,フォトマスクを用いた標準的なフォトリソグラフィによって約100μmのマイクロスケールプロトタイプを製作した.グルコース溶液中でこのプロトタイプが直線的に推進する挙動が光学顕微鏡下で観察され,提案した泳動原理が実証された.また推進速度評価実験を実施し,最大推進速度35μm/sを達成した.この実験値は物理モデルにより計算される理論値と整合する結果であった. 以上のように,当初の研究計画のとおり,生体医用マイクロ泳動ロボットの理論及び基礎特性が得られ,おおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い,実施項目4.設計論の構築・産業応用への可能性の提示,を行う.そのサブ項目として4-1.推進機構の設計論の構築,4-2.設計論を基に少なくとも1つの産業応用システム例,及びその新規性・進歩性の提示,を行う. 具体的な応用としては生体医用を想定しており,提案のマイクロ泳動ロボットによって新たに解決できそうなミッションを抽出・整理する.現状考えられるミッションとしては例えば,高精度ドラッグデリバリーや安全なカテーテルガイドワイヤの挿入などが考えられる.次に生体内で適用する際の制約条件と必要機能について整理し,現状のマイクロ泳動ロボットで実現できている特性(サイズ,速度など)と比較し,解決すべき課題を明らかにする.次にその課題を解決する実施形を考案し,その実現可能性について設計検討を行う.特に現状のマイクロ泳動ロボットは位置決め制御もしくは推進方向制御が課題であり,これらを解決する実施形の検討を行う.また,必要に応じてシステムの一部分のプロトタイプを製作し,一部性能の検証を実施する.以上の解決課題,制約,必要機能・性能,実施形について整理し,マイクロロボット及びそれを利用した医用ロボットシステムとしての設計論を構築する.
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