2017 Fiscal Year Annual Research Report
The Nyaya theory of argument: a historical study of its disputation with Buddhists
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17J07057
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
須藤 龍真 九州大学, 人文科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | バッタジャヤンタ / 『論理の花房』 / ニヤーヤマンジャリー / ニヤーヤ学派 / 仏教論理学 / 討論思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はバッタジャヤンタ(以下ジャヤンタ)著『論理の花房』「討論章」(第11章後半及び第12章)のうち,冒頭から第12章前半までの再校訂作業及び訳注研究を行った.再校訂にあたっては参照可能な複数写本の異読を網羅的に記録しつつ,従来の刊本のテキストと照合しながら校訂作業を進めた. 上記の基礎的研究に基づき,本年度は『論理の花房』「討論章」中の「擬似的理由」(hetvabhasa)に焦点を当て,特にジャヤンタに特徴的な「引き起こさない理由」(aprayojaka)という論理概念に関する検討を中心に以下の通り思想研究を行った. 1)『論理の花房』及び綱要書『論理の蕾』においてジャヤンタが彼以前のニヤーヤ学派の著作とは異なる「擬似的理由」解釈を行っている点について,その形式上の整合性と内容上の整合性という観点から,その正当化の過程を考察した.その結果,ジャヤンタが自身の遍充把捉論と排撃理論に基いて,論証における理由の条件を再構築していることを明らかにした. 2)『論理の花房』において第六の擬似的理由として言及される「引き起こさないもの」に関してジャヤンタが好意的に解釈している点について,その議論内容を整理し同概念の推論体系上の位置付けを検討した.その結果,ジャヤンタが内遍充と外遍充が本来的にはらんでいた推論上の不都合を両者の折衷案を採用することによって回避し,仏教徒からの批判を退けつつ,自身の推論体系を構築していることを明らかにした. 以上の研究成果は国内学会における口頭発表及び学術雑誌への投稿という形で報告した.また,本研究課題の対象を拡大するため,ネパール国立公文書館において新ニヤーヤ学派に属する文献を中心に写本調査を行ったほか,国内外におけるインド論理学関連の研究会への参加を通して,本研究課題遂行上,有益な情報を得ることが出来た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
参照する写本数の増加に従い一部写本の異読情報が網羅出来ていない箇所もあるが,『論理の花房』の校訂及び訳注研究については当初の計画通りに進展した.また,基礎的研究の進展にともない,予定通りに思想研究及び報告を行うことが出来たのと同時に,『論理の花房』「討論章」中の本年度に研究報告を行っていない箇所についても,関連資料の収集及び思想内容の検討を進めることが出来た.その結果,ニヤーヤ学派における討論思想の構造をより明らかにするため,本研究課題の対象を後代の新ニヤーヤ学派関連文献にまで拡大し,その準備段階としてネパールにおける関連文献の写本調査を行うなど,次年度以降の研究に繋がる十分な成果をあげることが出来た.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題遂行上の基礎的研究に位置付けられる『論理の花房』「討論章」の校訂及び訳注研究を引き続き行う.本年度の進捗状況を鑑みると,次年度中に「討論章」全体の校訂及び訳注研究を終えることが可能となる見通しである.また,本年度に読解を完了した「詭弁的論駁」部分に焦点を当て,特に同概念を巡る思想的交流が見られる仏教論理学派の文献との比較研究を中心に討論思想史を整理し,考察を進める.その成果については適宜全国規模の学会及び学術雑誌への投稿という形で報告する予定である.
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