2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J07097
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
土肥 篤 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | ドロミテ・ラディン語 / 文法化 / 心態詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドロミテ・ラディン語に現れる疑問の小辞paについて、その性質を明らかにすることを目的とし、本年度においては特に通時的な観点から分析を試みてきた。 具体的には、paの文法化が特に進んでいるとされる三つの方言(ガルデーナ方言、バディーア方言、ファッサ方言)を主な対象とし、この語が用いられる頻度および用いられた場合の用法について、19世紀から現在に至るまでの変遷を詳細に検討した。分析のためのデータは近年になって公開されたオンラインコーパス(Corpus dl ladin leterar)を用いて収集した。データ収集にあたっては19世紀から現在に至るまでの疑問文(疑問符のついた文)を全て抽出し、paが用いられているものと用いられていないもの、また純粋に情報を求める文とそうでない文を基準に計4種に分け、さらに時代および方言ごとにそれらの比率を比べた。 その結果、ガルデーナ方言においては先行研究が指摘する通りの文法化現象が起こっているのに対し、バディーア方言およびファッサ方言については必ずしもそうとは言えず、個別にさらに詳細な検討が必要であることを示した。さらにこの結果を受けて、年度末および次年度にかけてファッサ方言について下位方言ごとの違いまで視野に入れた現地調査を実施し、現象のさらなる解明を目指している。 また、次年度において主に扱う予定のテーマに先立ち、paと同じくラテン語POSTを語源とするpoについて、ガルデーナ方言とバディーア方言で通時的な変化をpaと比較しつつ検討し、この語がpaの文法化に影響を与えた可能性について指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現地調査とコーパス調査を行い、今後の研究に必要なデータの収集に成功した。また、主な二つのテーマとしたもののうち、一つ(小辞paの歴史的変化)についてほぼ完遂しただけでなく、もう一つ(小辞間の比較)についても着手し、成果を挙げたことによる。さらに、当初考えていた以上の幅広い場で研究発表し、議論を深めることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
小辞paが二つの観点、すなわち現在の用法と歴史的な用法の変化の両方からみて特殊な地位を占めていると思われるファッサ方言について、追加の現地調査を行って現象のさらなる解明を試みる。 また、主にpaとpoの関係について前年度から引き続いて対象方言を拡大しつつ考察を深める。 また、次年度は研究の最終年度でもあるため、これまでの成果を博士論文にまとめ、学位の取得を目指す。
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Research Products
(7 results)