2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study on Information Culture in Mongolian Nomadic Society
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17J07101
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
堀田 あゆみ 関西学院大学, 社会学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 予備調査 / 参与観察 / 地域差 / 信頼関係 / インフォーマント / 生活史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、モンゴル遊牧社会における「情報」や情報をめぐる相互行為である「情報行動」に焦点をあて、情報文化を読み解くことを通して、当該社会が「情報社会」であることを実証することである。そこで本研究では、情報文化を構成する5つの軸として①情報、②情報行動、③社会関係、④情報媒体、⑤情報地図およびフローチャートを設定し、人々の日常実践をそれぞれの軸に落とし込みながら民族誌的記述を行い、情報世界の可視化を試みる。 本年度は、前述した目的を達成するために、現地調査をモンゴル国内の二地域4カ所において実施した。8月~9月にかけて、宿営地が平野部に集中し、最も人々の往来が盛んになる夏季のアルハンガイ県において遊牧民世帯に滞在し、情報の収集、伝達にどのような手段が使われているのかに着目しつつ情報行動の参与観察を行った。自然環境の異なるタリャート郡、ウルジート郡でも新たに調査に協力してくれる遊牧民世帯(インフォーマント)を探し予備調査を実施した。また、自然環境・社会環境の大きく異なる、モンゴル国南部に位置し中国と国境を接するウムヌゴビ県にて予備調査を実施し、新たなインフォーマントを獲得した。 12月~1月にかけて、風雪を避けるために谷合に分散独居し、地理的・気候的条件によって人の往来が少なくなる冬季のアルハンガイ県ホトント郡、タリャート郡、ウルジート郡と一カ所に定住して放牧を行うウムヌゴビ県の調査世帯において、引き続き参与観察を行った。マイナス30度以下の寒さと積雪によって人の往来が途絶えがちな冬季にも約束通り訪ねたことにより、調査地の人々との信頼関係を築くことができた。各世帯において社会関係、家畜構成、生活史の聞き取りを行い、本格的な情報行動に関する調査の基盤を整えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の課題は、モンゴル国内の生活環境を異にする二地域において調査協力世帯(インフォーマント)を獲得し、予備調査を実施することであった。入念に調査地を検討した上で新たな調査地においてインフォーマント四世帯を獲得することができた。 また、参与観察を通して、どのような方法論が情報行動を調査する上で有効かを検討すると同時に、収集したデータを分析するための文献調査としてソーシャル・キャピタル論やネットワーク論などを渉猟しており、情報行動と社会関係を分析する枠組みが確立されつつある。以上の点から、総じて研究が順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査結果をまとめつつ、次年度はレコーダーを使用した会話データの収集を行い、個別具体的な情報行動を抽出(文字データ化)し、情報行動の全体像と扱われている情報の内容を分類・分析する計画である。 また、先の現地調査で携帯電話のなかった時代における情報伝達手段、社会主義時代の情報交換手段としての電話の位置づけが語られるなど、生活史に埋め込まれた情報ツールの経年変化も、現代の情報行動の解明において必要であることを認識するに至ったため、特に年配世代からの聞き取り調査も進める予定である。
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Research Products
(5 results)