2017 Fiscal Year Annual Research Report
酸素八面体回転の普遍性を生かした強誘電体合成と機能・物性開拓
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17J07106
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 傑 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 強誘電体 / 誘電体 / マルチフェロイクス / 構造物性相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は複合アニオンおよび欠陥の規則配列による対称性制御、および、それらと酸素八面体回転を組み合わせた新規強誘電体合成に着手した。 複合アニオン系については既知の層状ペロブスカイト化合物を前駆体として用い、酸化物イオン以外のアニオン挿入を試みた。しかし前駆体へのアニオン挿入/交換反応は起こらず、目的としていた対称性の制御は達成できなかった。 欠陥の規則配列については、当初予定していた酸素欠陥を制御する方法に加え、カチオン欠陥の配列を制御するアプローチも加えて試みた。真空封入法などを用いた固相反応により、多結晶試料を合成し、放射光X線回折測定とそれに基づくRietveld解析、および光第二高調波発生の観察などから結晶構造と物性の評価を行った。いずれのアプローチでも、規則配列による対称性の低下と酸素八面体回転とが組み合わさることによって、極性構造が安定化されることを明らかにした。
また、これまでに発見していた新規強誘電体Sr3Zr2O7の構造相転移を、中性子回折を用いてより詳細に調べることで、この物質が700 K付近で反強誘電相に転移することを明らかにした。通常のペロブスカイト型強誘電体は局所的な電気分極さえ持たない非極性な常誘電相に転移する一方で、Sr3Zr2O7はSrの変位に由来した局所的な電気分極が巨視的に打ち消しあった「反極性」な構造に転移する。この構造は反平行な電気分極を持つことから、基礎と応用の両面から近年注目されている反強誘電体として機能する可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度は当初予定していた二つの手法のうちの一つで、極性構造を得るという目的を達成できた。加えて、カチオン欠陥の規則配列という新しいアプローチを考案し、これによっても極性構造を得ることが出来た。
強誘電体Sr3Zr2O7の構造解析と誘電性に関して、ZrO6の回転モードが温度上昇とともに変化することで、反強誘電体に転移することを見出した。この種の強誘電転移と回転モードの変化は非常に珍しい。この研究成果に関する講演は高く評価され、応用物理学会から第43回講演奨励賞を授与された。また、この研究成果をまとめた論文はAdvanced Functional Materials誌への掲載が決定している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究では、考案した対称性制御の手法と酸素八面体回転を組み合わせることによって極性構造が誘起可能であるとを明らかにした。しかし、それぞれの物質において、強誘電体に特徴的なP-Eヒステリシスを観測するには至っていない。これは試料の質や、組成のわずかな不定比性によるものであると考えられる。今後は緻密でリーク電流の少ない高品質な試料を作製できる条件を探索し、P-Eヒステリシスの実測を目指す。各物質の特性からどうしても困難であると判断した場合は、焦電流測定による実証を試みる。
また、当初の計画通り、Fe3+イオンを始めとした磁性イオンを強誘電体に導入すること試みる。
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[Journal Article] Ferroelectric Sr3Zr2O7: Competition between hybrid improper ferroelectric and antiferroelectric mechanisms2018
Author(s)
Suguru Yoshida, Koji Fujita, Hirofumi Akamatsu, Olivier Hernandez, Arnab Sen Gupta, Forrest G. Brown Haricharan Padmanabhan, Alexandra S. Gibbs, Toshihiro Kuge, Ryosuke Tsuji, Shunsuke Murai, James M. Rondinelli, Venkatraman Gopalan, Katsuhisa Tanaka
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Journal Title
Advanced Functional Materials
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] 層状ペロブスカイト強誘電体に見られる準安定な反極性構造2018
Author(s)
吉田傑, 藤田晃司, 赤松寛文, Olivier Hernandez, Arnab Sen Gupta, Alexandra Gibbs, 久家俊洋, 辻涼介, 村井俊介, Venkatraman Gopalan, 田中勝久
Organizer
第65回応用物理学会春季学術講演会
Invited
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[Presentation] ルドルスデン-ポッパー相における強誘電性2017
Author(s)
吉田傑, 藤田晃司, 赤松寛文, Olivier Hernandez, Arnab Sen Gupta, Alexandra Gibbs, 久家俊洋, 辻涼介, 村井俊介, Venkatraman Gopalan, 田中勝久
Organizer
第78回応用物理学会秋季学術講演会
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[Presentation] 層状ペロブスカイト型酸化物における間接型強誘電性と構造相転移2017
Author(s)
吉田傑, 藤田晃司, 赤松寛文, Olivier Hernandez, Arnab Sen Gupta, Alexandra Gibbs, 久家俊洋, 辻涼介, 村井俊介, Venkatraman Gopalan, 田中勝久
Organizer
日本セラミックス協会第30回秋季シンポジウム