2017 Fiscal Year Annual Research Report
The Study on the Urban Conservation Approach for Street Space in Hanoi's Ancient Quarter
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17J07113
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柏原 沙織 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | ハノイ旧市街 / 職業の通り / 歴史地区 / 歴史的都市景観 / 商業の変遷 / 都市遺産 / 通り空間 / 無形文化遺産 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は①都市遺産マネジメントにおける現在の論点整理、②ハノイ旧市街の町並み保全に関する枠組み・取組に関する情報の再整理と追加の情報収集、③地区全体の同業者集積の歴史的変遷と類型化、④短期的な変容メカニズムの解明をめざし、文献収集・ヒアリング・アンケート調査を元に分析・考察を行った。 ①文献調査・過年度調査の内容から、リビングヘリテージ、世界遺産地以外のアジアの歴史的商業地区、歴史的都市景観の取組を概観し、都市遺産マネジメントにおける現在の論点を3点抽出した。 ②7・9月のハノイ調査における行政関係者、専門家ヒアリングに加え、ハノイの保全事業に関わったトゥールーズ市関係者へメールヒアリングを実施。地区の特徴である同業者が集積した「職業の通り」の保全の枠組みにおける位置づけの変遷を分析し、到達点と限界を指摘した。 ③5月南仏調査で統計資料・古地図を収集、7月ハノイ調査では、国立公文書館および専門家より統計資料を入手した。統計情報、既往調査・現地調査、文献調査から、地区全体の10時点の集積状況とその変遷パタンを類型化し、7分類を得た。 ④7類型のうちこれまで分析対象となって来なかった3類型から各1通りで事例研究を実施。対象のハンブオム通り(HB)、ハンダオ通り(HD)、ルオンヴァンカン通り(LVC)のうちLVC通りでは新規調査、過年度調査実績がある2通りは追加で調査した。調査内容はLVC通りの沿道建物の基礎調査・店舗アンケート、行政・専門家・商業者・住民ヒアリング。各通りで2004/2005年時点の戸別店舗の記録と比較して職業の転換状況を分析し、ヒアリング内容と合わせて同業者集積の転換メカニズム仮説を構築した。 以上の分析を元に、今後のハノイ旧市街のマネジメント策構築に向けた方向性を示唆としてまとめ、博士論文「ハノイ旧市街の「職業の通り」の変容メカニズムに関する研究」を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は南仏の文献調査およびハノイでの2度の現地調査により資料・データを収集したほか、学会への投稿論文1件、博士論文執筆に取り組んだ。ハノイの現地調査は当初計画から2度に増やした。 研究成果としては、現在の都市遺産マネジメントを取り巻く状況について歴史的都市景観を含む複数事例をレビューし論点整理を行ったほか、ハノイ旧市街の保全に関する枠組みの発展を分析し、当該地区を特徴づけている動的な無形文化遺産の位置づけの変遷を明らかにした。調査で得られた膨大な量のデータ分析より、ハノイ旧市街の同業者集積の約150年間にわたる変容を明らかにしたほか、3つの通りでの詳細なケーススタディでは量的・質的なデータを分析し、同業者集積の転換メカニズムの仮説を構築した。 当初の研究実施計画で予定していた内容に加え、集積転換メカニズム仮説の構築まで進めることができ、期待以上の研究の進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、29年度に得られたマネジメント策構築に向けた示唆に加えて、より実効性を鑑みた提案の作成、地区の特徴である「職業の通り」の空間に表出する商業活動に影響を与えている要因(観光産業、新規人口の流動、マネジメント体制、等)、商業空間を規定している町家の構成・所有権の状況と同業者集積の関係についてさらに考察を深めるため、現地の研究協力者と協働しながら調査・検討を進める予定である。
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Research Products
(2 results)