2017 Fiscal Year Annual Research Report
非平衡非定常性に駆動される高分子重合過程の数理的研究
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17J07169
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松原 嘉哉 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 生命の起源 / 高分子重合 / 非平衡駆動 / 複雑性 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、非平衡駆動に対する高分子配列の複雑性の依存性を調べた。RNAなどの生体高分子は複数種の単量体より構成され、その複雑な配列は遺伝子情報や触媒活性などの意味で生命にとって重要である。そのような複雑な高分子が出現し維持されることは、生命の起源研究において主要な問題とされる。 複雑な高分子配列がいかなる条件において出現するかという問題意識のもと、ある長さの高分子を鋳型として用いて重合する高分子の数理的モデルを解析した。モデルでは非平衡駆動として働く一定速度の単量体供給のあるケモスタット的な状況を考える。まず確率的シミュレーションにより、高分子系ではある特定の配列が選択され、その配列は非平衡駆動の強さにより段階的に変化することを発見した。また、非平衡駆動が弱いほど選択される配列は非周期的なものになる傾向があることが分かった。我々は力学系および確率過程の手法で解析し、これらの結果が鋳型配列を合成するまでの化学反応の経路の多様性によって理解できることを明らかにした。さらにモデルの化学反応系をアトラクター間の遷移のみを考慮したマルコフ状態モデルに簡略化することで、選択される配列をより広い条件のもとで計算し、非平衡駆動と配列の非周期性との関係が一般に成り立つことを示した。これらの関係より生命の起源にとって最適な非平衡環境があることが示唆される。以上の結果は複数の学会で発表し、現在論文として投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非平衡駆動の強さと高分子配列の複雑さの関係という、生命の起源における新しい視点をもたらしたことが本研究の成果である。これらの成果は、生物物理学会の招待講演、フランスでの国際会議などで発表し、論文としてまとめ現在投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度からは、当初の予定である環境の周期的な変動により駆動される高分子重合過程の機構を調べると同時に、高分子重合過程のkineticsが鋳型配列の進化則や変異に対する頑健性に与える影響についても調査する予定である。
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Research Products
(4 results)