2018 Fiscal Year Annual Research Report
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17J07192
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鶴来 航介 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 木器保管 / 刃縁生成過程 / 完成未使用品 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題2年目は、木器の保管と使用をめぐる検討をおこなった。仙台平野の弥生時代中期の鍬製作工程を検討したところ、完成品の指標となる柄孔穿孔は仕上げ工程の途中段階にすぎず、実際には大半がまだ未成品であることが判明した。さらに製作工程と刃縁形状の関係を分析したところ、これまで「廃棄品」と位置づけられてきた資料群に「完成未使用品」が相当数ふくまれることがわかった。従来流路から出土する木器の性格は、未成品であれば技術的な要因にもとづく保管、完成品であれば廃棄と考えるのが常識であった。しかし、完成品でかつ未使用状態であれば、加工のための保管は不要であり、また未使用であるがゆえに廃棄とも考えにくい。こうした状況から、弥生時代には技術的理由ではない文字通りの「保管」が流路でおこなわれた可能性が指摘できる。その背景には、乾燥状態におけるひび割れ防止や虫除けなどが意図されたものと推測される。 さらに全国の木器保管遺構に目を向けると、未成品と使用済み品が共伴する事例が存在する。未成品が保管、完成品が廃棄とすると、保管遺構に廃棄したとの解釈になるが、そうした行為が実際におこなわれただろうか。上述のように完成未使用品を流路で保管する何らかの理由が存在するのであれば、それは使用を開始した木器にも当てはまるものだろう。少なくとも従来廃棄品とみなされてきた完成品には、使用感の少なく現代的な感覚では廃棄と理解しがたい資料が数多くみられる。出土資料の「使用中」と「使用完了」を識別することは困難だが、すべてを一律に廃棄品と断定することには慎重であるべきだろう。今回検討した刃縁形状は、使用の度合いを判別する際にも有効とみられ、分析を進めることで保管品の一群を発見できる可能性がある。本研究課題が射程とする木器管理を論じるうえでも、重要な基礎的研究として位置づけられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、木器保管遺構にふくまれる個別資料を総合的に評価することで管理主体の集団について分析し、集団関係を考察することを射程とする。1、2年目の研究において個別資料の所属年代、使用状況の判定基準を整備しており、資料を評価するための基礎的研究はすでに完了している。また保管遺構についてもすでに集成をおこなっており、具体的な分析を開始できる状態を整えている。したがって3年目の開始時点で必要な素材を揃えていると判断できるため、研究課題は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の1年目は木器編年を構築し、これまで共伴土器に依拠してきた年代決定を木器自体から考えることを可能とした。2年目だった昨年度は仙台平野の弥生時代中期の広鍬を題材として、木器製作工程と刃縁の生成過程をあわせて検討し、従来「完成品」とされてきた資料のなかに「完成未使用品」がふくまれることを指摘した。流路中に完成品かつ未使用品が存在する事実は、未成品の技術的保管あるいは完成品の廃棄と異なる第3の埋没要因を示唆する。 以上の成果をうけて、最終年となる本年度は木器出土遺構の性格を評価して、そこから集団の様態を考察する。上述の研究において刃縁生成モデルを作成しており、完成品のなかでも資料の使用度合を評価することができる。この個別資料の評価を出土状況とあわせて考えることで、木器包含遺構から非廃棄状態すなわち意図的な管理を反映する事例を抽出して、流路利用の実態をまず明らかにする。そのうえで各事例における出土状況を吟味し、その管理主体がどのような集団を示すのか、また製作者集団といかなる関係にあるのか、といった問題を検討する。 上記の主題は木器全体を横断した検討であるが、農具に限れば農業経営を道具の観点から検討することができる。弥生時代の農具は鍬や鋤それぞれに形式上の細分がみられ、用途にあわせて使い分けたことが推定される。形式ごとに出土量は異なっており、これが個人保有と集団保有の差を表す可能性も考えられる。そうした農具組成をあわせて検討することで、農耕における共同作業の様態についても考察する。 本年は以上の成果を論文としてまとめることまでを予定する。
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Research Products
(1 results)