2018 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロ元素含有C3対称構造を基軸とした新奇共役系高分子の創出
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17J07338
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡辺 浩行 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 共役系高分子 / アザフェナレン / 窒素 / ホウ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)ペンタアザフェナレン(5AP)を含む共役系高分子の電子・磁性材料への応用 前年度に新たに開発した5APの新奇合成法について、様々な誘導体を合成し、学術論文として発表した。この合成法を展開し、窒素原子の数が異なるヘキサアザフェナレン(6AP)誘導体の合成にも成功し、窒素原子の導入位置が物性に大きく影響することを明らかにした。また、液晶性置換基を様々な位置に導入することで、その導入位置ごとに異なる液晶相の形成にも成功し、従来明らかにした5APの電子状態における置換位置への依存性に加え、その集合状態も置換基の導入位置で制御できることが示唆された。以上の結果は、本研究員が新たに開発した合成法が、アザフェナレン類の電子状態や集合状態の制御を可能とすることを示唆している。また、「置換基の導入位置による置換基効果の違い」は、実現可能な骨格こそいくつかあるものの、実験的に実証し幅広く制御した研究は類を見ない。この概念を他の骨格に拡張することで、有機材料の分野の新たな展開が期待できると考えられる。 (2)窒素・ホウ素含有新奇縮環構造と共役系高分子への展開 窒素・ホウ素を含む縮環分子を設計しその合成を試みた。当初設計していた分子については前年度に合成が困難であったため、異なる前駆体を設計しその簡便な合成に成功した。さらに、窒素とホウ素を含む新たな構造として、5APを基盤とする2つの分子を設計した。これらの展開では、ホウ素のルイス酸性を活かし軌道のエネルギー準位が大きく変化することで、発光特性の獲得や、近赤外領域での吸収・n型半導体特性につながる深いLUMO準位といった応用上重要な物性の獲得に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)については、5APの新奇合成法について論文発表を行った。さらに、置換基の導入位置による置換基効果の違いを、骨格中の炭素原子から窒素原子への変換、集合状態の制御などといった新たな展開についても適用可能な概念であることを示した。この結果は、これまで実現可能な骨格がありながら実証例がほとんどなかったものであり、本研究によって得られた新たな知見であると考えられる。 (2)については、ホウ素の導入は反応条件を検討しているところであるが、全く前例がなく、合成の困難が予想された分子について、前駆体の縮環体までを簡便に行えたことは大きな進捗であると言える。さらに、当初の分子設計にとらわれず、5APとホウ素を組み合わせることで大きな物性変化を誘起し、研究目的とする「窒素とホウ素の協同による新たな物性の獲得」という点では大きな進展があったものと言える。 以上のように、(2)については当初期待した点までの進展は得られていないが、5APについての新たな展開も見出しており概ね順調に進展していると考えられる。(1)については5AP骨格の新たな合成法によって見出した物性が、共役系分子一般に拡張可能であることを示唆している。以上のことから、総合的に判断して本研究課題は当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)については、本研究員が開発した合成法を用い、主鎖のパッキング向上に有効であることが報告されている分岐アルキル基を導入した5APを合成し、共役系高分子へ導入する。この高分子を薄膜化しキャリア輸送材料として評価することで、5APが持つ特異な電子状態がバルクのキャリア輸送特性にどのように影響するかを調査する。ここまでの結果から、5APに直接アルキル基を置換することは困難であると示唆されており、従来の誘導体から簡便に変換可能な合成経路を考案し、検討する予定である。磁性材料としての5APについては、分解が抑制されていることが示されたことから、電気化学的な手法を中心にラジカル状態での電子状態の評価を今後行っていく予定である。実際に、電気化学反応によって5APを酸化できることは初期的な結果から示唆されている。 (2)については、現在の合成経路の反応条件を検討すると共に、他のヘテロ元素を含む分子の合成法も参考にした新たな合成経路を考案・検討する予定である。また、アザフェナレンとホウ素原子の協同による研究成果については、それぞれの特性を活かした物性が得られていることから、論文投稿を行う予定である。
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Research Products
(7 results)