2018 Fiscal Year Annual Research Report
建物モニタリングに基づく地震被災建物の医療活動継続性の即時判定手法の開発
Project/Area Number |
17J07340
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
新本 翔太 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 余震ハザード / フラジリティ関数 / 構造ヘルスモニタリング / 医療機器 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目の課題は1年目の課題の進行状況を踏まえて、(1)振動台実験に基づく医療機器のフラジリティ関数の構築、(2)建物に設置した地震計による観測記録を余震ハザード推定の精度向上に利用する方法の基礎的検討であった。一つ目の課題においては、以前に実施した振動台実験の結果を参照して医療機器の地震応答解析用のモデルを作成した。そして医療機器の地震応答解析ならびに振動台実験の結果から、地震時における医療機器の移動量、ロッキング、転倒に関するフラジリティ関数を作成した。さらに医療機器の地震応答解析モデルの精度を向上させるために、病院で使用されている床材の違いを考慮した、キャスター付き医療機器の摩擦計測実験を計画し、一部完了した。 二つ目の課題では、第一に地震観測記録を用いて、従来の距離減衰式に基づく余震ハザード推定の精度を向上させるための基礎的な検討をした。しかし従来の余震ハザード推定法の枠組みでは、地震観測記録を有効に利用することが難しいことが示唆されたため、研究方針を再検討した。新しい方針ではおおまかに、余震を特徴づける物理量と、単一の観測点で記録された地震波のデータの関係を直接定式化することで、観測記録を余震ハザード推定に応用するという目標を設定した。以上の方針の変更を踏まえて、第二に、余震と単一地点の地震観測記録を関係づけるための基礎検討の一部として、特定の地域で発生した余震を対象として、余震を特徴づける物理パラメータ推定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目の課題は、(1)振動台実験に基づく医療機器のフラジリティ関数の構築、(2)建物に設置した地震計による観測記録を余震ハザード推定の精度向上に利用する方法の基礎的検討であった。課題(1)に関しては医療機器の地震応答解析モデルを作成し、医療機器の移動量、ロッキング、および転倒量に関するフラジリティ関数を作成できた。この解析および振動台実験の結果を踏まえて医療機器の転倒やロッキングを防止するための簡易な方法を提案できた。またキャスター付き医療機器の地震応答解析モデルの精度のために床材の違いを考慮した摩擦計測実験を計画し、一部完了できた。以上から課題(1)はおおむね順調であると判断した。 二つ目の課題では、第一に地震観測記録を用いて、従来の距離減衰式に基づく余震ハザード推定の精度を向上させるための基礎的な検討をした。しかし従来の余震ハザード推定法の枠組みでは、地震観測記録を有効に利用することが難しいことが示唆されたため、研究方針を再検討することになった。新たな方針を設定したのちに、その方針に沿った検討の一部として、特定の地域で発生した余震を対象として、余震を特徴づける物理パラメータを推定した。課題(2)に関しては、方針の変更を余儀なくされたが、新しい方針を検討し、その方針に沿った課題の一部を完了できたため、期待ほどではないがおおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目の課題は2年目までの課題の進行状況を踏まえて、(1)医療機器の摩擦計測実験およびその結果を用いたフラジリティ関数の改良、(2)建物に設置した地震計による観測記録を余震ハザード推定の精度向上に利用する方法の検討とする。課題(1)では2年目の摩擦継続実験を継続して行い、キャスター付き医療機器の移動量に関するフラジリティ関数の精度向上を目指す。 課題(2)も2年目の課題の継続である。2年目に研究方針を変更した。その方針はおおまかに効に利用することが難しいことが示唆されたため、研究方針を再検討した。新しい方針では、余震を特徴づける物理量と、単一の観測点で記録された地震波のデータの関係を直接定式化することで、観測記録を余震ハザード推定に応用するというものである。これを踏まえて次の4つの課題の遂行を目標とする。(1)応力降下量や地震モーメントなどの地震を特徴づける物理量を対象とする余震に対して推定する。これは2年目に一部完了している。(2)地震モーメントを主なパラメータとして、観測された地震波をスケーリングする方法を検討する。(3)1と2の結果を組み合わせて、観測記録を波動伝播モデルとして採用した半経験的な余震シミュレーション法を開発をする。(4)開発した余震シミュレーションを利用して、余震と単一地点で観測された地震波の関係を検討し、観測記録を余震ハザード推定に有効に利用する方法を検討する。
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