2018 Fiscal Year Annual Research Report
新興ボルナウイルスの宿主域および病原性に関する分子基盤の解明
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17J07483
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小森園 亮 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | ボルナウイルス / リバースジェネティクス / 鳥ボルナウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
新興ボルナウイルスの病原性・宿主域を解析するために、鳥ボルナウイルスの1種であるParrot bornavirus-4 (PaBV-4)の人工合成系(リバースジェネティクス)を確立した。本法の確立により任意の変異をウイルスゲノムに導入でき、かつレポーター遺伝子を同時に感染細胞で発現する組み換えウイルスを作成することが可能になった。 まず初めにドイツで分離されたPaBV-4野生株のアンチゲノム配列をベクタープラスミドに組み込み、細胞内で転写後RNAが切断されるようゲノムの両末端にリボザイムを挿入した。このリボザイム配列は、すでに確立されている哺乳類ボルナウイルスBoDV-1ベクターを参考にした。またBoDV-1ベクターと同様、容易に感染細胞を同定しウイルスの増殖を解析できるよう、PおよびM遺伝子間にレポーター遺伝子GFP,mCherry,luciferase)を組み込んだ。つぎに、このPaBV-4ベクターの作出に特化した鳥類細胞を作成した。前年度までの結果より、PaBV-4が属するClade 3鳥ボルナウイルスは哺乳類細胞へ感染しないことが明らかとなっていた。このことから人工合成系に適した鳥類細胞が不可欠であることが示唆された。PaBV-4に感受性を示すウズラ由来のQT6細胞にpiggybac systemを用いてSV40 large T antigenをゲノムに挿入し、T antigen恒常発現QT6細胞(QT6-T)を作成した。さらに同細胞にプラスミドを高効率に導入するためトランスフェクション試薬を検討した。このQT6-T細胞に作成したPaBV-4ベクタープラスミドおよびPaBV-4のN, P, Lタンパク質発現プラスミドをトランスフェクションし継代を45日間続けた結果、感染性を示す組み換えPaBV-4を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までの結果より、ボルナウイルスの宿主域を規定するウイルス因子を同定し詳細な分子機構まで明らかとしている。また今年度実施した鳥ボルナウイルスの人工合成系の確立により、哺乳類ボルナウイルスだけでなく鳥ボルナウイルスの変異体を作成できることから、さらに宿主域規定に関する解析の発展が見込まれる。 また新興ボルナウイルスである鳥ボルナウイルスはオウム目へ感染することで前胃拡張症を引き起こし高い病原性を示す。絶滅危惧種であるオウム目の保全のため鳥ボルナウイルスの疫学調査は非常に重要である。このため国内での、特に主にオウム目を取り扱う繁殖場での鳥ボルナウイルスの実態を調査した。疫学調査を実施するにあたって、ウイルス検出法の開発が必須であったため、鳥ボルナウイルスの中でも優占種であるPaBV-4の迅速かつ高感度で簡便な検出法RT-LAMP法を開発した。本法はRNAを逆転写するのための操作は不要であり、また目視で陽性陰性を判別できる。実際に開発したRT-LAMP法を繁殖場で実施し、試験した個体のうちおよそ半数がPaBV-4陽性であることがわかった。 鳥ボルナウイルスの人工合成系の確立、および繁殖場での疫学調査とPaBV-4の検出法確立について現在論文執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
宿主域規定の分子基盤に関して、より詳細に解明するため今年度確立した鳥ボルナウイルスPaBV-4の人工合成系を用いて変異体を作成し、鳥類および哺乳類細胞への感染性を解析する。昨年度同定した宿主域規定にかかわるウイルス因子の領域を哺乳類ボルナウイルスBoDV-1の同領域に置換した組み換えPaBV-4を作成後、培養細胞への感染性およびLewisラットへの感染性を解析する。 病原性発現の分子基盤を解明するため、感染することでヒトに脳炎を引き起こす新興ボルナウイルスの1種であるVSBV-1の人工合成系を確立する。今年度実施したPaBV-4の人工合成系と同様、VSBV-1に適した哺乳類細胞を検討し、またアンチゲノム配列を組み込んだベクタープラスミドから組み換えウイルスを作成する。その後、ウイルス溶液をLewisラットへ脳内投与、静脈投与および鼻腔内投与することで感染を成立させるか検討する。感染した場合、体重変化やISG発現、病理解析を行うことでVSBV-1の病原性を明らかにする。
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Research Products
(3 results)