2017 Fiscal Year Annual Research Report
Learning Active Olfactory Sensing Method from Crayfish: Individual Differences within the Species and Diversity among Crustaceans
Project/Area Number |
17J07494
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
石田 華子 東京農工大学, 大学院生物システム応用科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 甲殻類生物 / 嗅覚探索行動 / 噴流 / 数値流体力学 / 化学センシング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、水中で環境汚染物質など化学物質の発生源を探索するロボットの実現を目指す。化学物質源を探索する最適戦略は、環境により異なる。そこで、様々な環境に生息する甲殻類生物が匂いを頼りに餌を探す行動に着目する。生物学の実験では通常、個体差は誤差とみなす。しかし本研究では敢えて個体差に着目し、探索能力が特に秀でた個体を抽出して最適探索戦略を見つけ出す。ザリガニは自ら生成した噴流を利用して周囲から匂いを引き寄せ、餌を探索すると言われている。小型インク放出装置を開発してザリガニの頭胸甲に取り付け、歩行中のザリガニが作る噴流を可視化し、これを全方位から観察して詳しく解析する。個々のザリガニが見せた行動を、ザリガニをモデル化した装置で模擬し、各環境における最適探索戦略を求める。同様の解析を他の甲殻類生物に対しても行い、様々な生息環境における最適探索戦略を見つけ出し、水中ロボット開発の設計指針を確立する。 今年度は、ザリガニが噴流を生成した際に周囲から流体が引き寄せられる様子をモデル化し、数値流体力学シミュレーションにより解析した。また、自由に歩行するザリガニが作る噴流を可視化するために、ザリガニの背中に取り付けても歩行を妨げない大きさのインク放出装置を開発した。マイクロポンプの流量を制御する基板を33 mm × 35 mmの大きさで実現し、動作確認を行ったところ、噴流を可視化して実験を行うのに十分なインク放出流量と駆動時間を持つことが確認された。さらに、ザリガニが匂いを引き寄せる様子を全方位から解析するシステムを開発した。5台のカメラから得られた動画を同期して同時に再生するプログラムを作成した。実験開始時の照明点灯の瞬間を画面の明るさの変化から検出し、各動画をその時点から再生する。全てのカメラの動画を同時に再生しながら、その中の任意の動画の画面を選択して拡大表示できるようにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画していた研究内容を実施し、概ね計画通りの成果が得られた。ザリガニは、生成する噴流の方向を三次元的に変えることができると報告されており、自由に歩行して餌を探索している最中も、状況に応じて噴流の方向を三次元的に変えていると予想される。噴流が生成されると、噴流に対して軸対称に周囲の流体が引き寄せられる。噴流を放出する方向を変えると、軸の方向が変化し、異なる方向から流体が引き寄せられる。噴流の放出方向を様々に変え、どの方向からどの程度の速度で流体が引き寄せられるのかを数値流体力学シミュレーションにより調べており、代表的な放出方向に関する解析を終了した。 また、ザリガニが作る噴流を可視化するための小型インク放出装置を開発した。3.6 Vのリチウムイオンコイン充電池を用い、DC/DCコンバータにより3.6 Vを5 Vへ昇圧させてマイクロポンプを駆動する。マイコンからポンプの制御信号線にPWM信号を入力し、ザリガニの噴流の可視化に適した流量にインク放出量を調節できるようにした。製作する装置は水中に沈めて用いるため、装置全体をシリコーンゴムで封止して防水を施した。装置にはワイヤレス充電ICと専用コイルを組み込み、封止した後にもリチウムイオン充電池を充電できるようにした。この構成で装置の回路設計を行い、33 mm × 35 mmの大きさでプリント基板を製作した。噴流を可視化して実験を行うのに十分なインク放出流量と駆動時間を持つことも確認した。 さらに、ザリガニの行動を全方位から観察するシステムを開発した。嗅覚探索行動中のザリガニの様子と放出された噴流の方向を5台のビデオカメラで撮影し、三次元的な噴流の方向を算出する。複数のビデオカメラで撮影した動画を同期して同時に再生しながら、その中の任意の動画の画面を選択して拡大表示できるようなプログラムを作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
インク放出装置を用いてザリガニの行動観察実験を繰り返し行うため、短時間で充電が行えるように装置を改良する。そして、開発した装置をザリガニの頭胸甲に装着し、歩行中のザリガニが作る噴流を可視化して、全方位観察システムを使いザリガニの行動を記録する。全方位観察システムの動画再生プログラムを用いて抽出したシーンに対して、可視化された噴流を画像の中から自動で認識し、その方向を三次元的に算出できるような実験動画の解析プログラムを開発していく。 また、引き続き数値流体力学シミュレーションを行って結果を蓄積し、ザリガニが放出する噴流の方向を行動観察結果と照らし合わせ、局面に応じた匂いの引き寄せ効果を調査する。これまでに、噴流を左右の真横、後方45度、上方45度に放出した際に形成される流れ場をシミュレーションによって求め、匂いの引き寄せ効果を比較している。ザリガニの行動観察中に実際に記録された噴流放出方向に対してシミュレーションを行い、形成された流れ場によって、どの方向からどの程度の速度で匂いが引き寄せられるか調査する。 さらに、自由に歩行して餌を探索するザリガニの行動を詳細に観察して、探索戦略を解析する。そして、ザリガニの抜け殻をスキャンし、3Dプリンタで出力する。これを用いてザリガニをモデル化した装置を開発し、解析した探索戦略を模擬する。流れが乏しい環境や一方向に流れのある環境を実験水槽内で再現し、モデル化した装置を用いて実験を行って、それぞれの環境に適した、最適な探索戦略を解明する。
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Remarks |
石田研究室ホームページ http://web.tuat.ac.jp/~h-ishida/
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Research Products
(5 results)