2018 Fiscal Year Annual Research Report
外れ値への頑健性および多目的最適化を導入した近似計算代数アルゴリズムの開発
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17J07510
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
計良 宥志 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 消失イデアル / 近似基底計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は昨年度に引き続き,研究対象の近似代数の特に近似消失イデアルについての理論的な解析を進めていた.今年度は近似消失イデアルの主役である近似消失多項式に関して従来の扱いでは自明で無用な多項式が発見されてしまう可能性を指摘しそれを解決する手法を提案した.これは本質的には,消失多項式の評価が正規化されていないために生じる問題である.計算代数の伝統的な方法では単項式順序と呼ばれる構造的な仮定を定めることでこれを解決するが,実際の応用において適切に単項式順序を定めるのは難しい. 単項式順序なしでどのように正規化を行うか,というのが重要な課題である.提案手法は近似消失多項式の計算手法の様々なものと組み合わせることができる点で汎用性に富む.成果を論文にまとめ,機械学習分野のトップ会議であるICMLに投稿し現在査読中である. この研究結果は,消失イデアルの近似基底計算を機械学習等の応用へ利用するための基礎的な問題を解消する第一歩である.現時点においては,この問題を効率的に解決する方法が不明であり,指数計算量必要になる.実用のためにはこれを多項式時間にすることが必要でこれは次の課題である.そのために伝統的な係数による正規化ではなく,他の量による正規化を考えることが必要となる.昨年度と合わせて近似消失イデアルの理論的な不完全さが見えてきたたため,さらに理論面の研究を進めて,また今後の研究ではそれらを改善しまたそれを踏まえた応用などを行うことが期待されている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度においては近年の基底計算で見逃されていた問題を発見し,そのシンプルな解決法を提案し,理論と実験の両面から解析を行った.理論面においては,従来固有値問題として解かれていた部分問題では上記問題を解消するには不十分で,それを一般化固有値問題に拡張することで簡単に解消できるということを発見した.実験において,従来の固有値問題による基底計算では大量の「不要な基底」「意味のない基底」が生じることを示し,提案の一般化固有値問題に基づく方法はこれを解決し,少数の意味のある基底のみを計算できることを示した. 一般化固有値問題を導入する目的は,従来の基底計算で正規化を行うことである.今回は伝統的な係数による正規化を行った.しかしこれは非常に大きな計算量を要求するものであるため,更なる研究方針として,効率的な基底計算を可能にする正規化を提案するという次なる目標ができた.
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Strategy for Future Research Activity |
基底計算における正規化を導入する理論的なフレームワークを作ることができたので,次はそれを効率的に実現するということが必要である.従来の計算代数分野の基底計算では単項式順序を用いることで効率的な正規化を達成しているが,本研究では単項式順序を用いないでの正規化を目標とする.伝統的な係数による正規化は,単項式順序なしでは本質的に効率が難しいため,別の量に基づく正規化が必要になる.
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