2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J07512
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
早川 朝康 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | ガンマ線バースト / ブラックホール降着円盤 / 超新星爆発 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガンマ線バースト(GRB)と超新星は別々の天体現象として観測がされていたが、1998年以降これらが同時に起こっていると思われる天体現象が報告されるようになってきた。このGRB付随超新星を説明するモデルとして、collapsar モデルと呼ばれる、高速回転をする大質量星が重力崩壊するモデルが提案されている(Woosley 1993, MacFadyen & Woosley 1999, Kohri et al. 2005, Kumar et al. 2008)。実際にGRB付随超新星の観測例を説明できるか、シンプルではあるが矛盾のないモデルでの数値計算を行って検証をしてきた。また、様々な親星に適応することで、GRB付随超新星が本当に起こり得るのか、親星が変わることによって、他に関連した突発天体現象(超新星爆発や暗い超新星, GRB, X線フラッシュなど) について示唆が得られるか議論を行ってきた。その結果、従来考えられてきたcollapsar モデルでは、GRB付随超新星の観測を説明することはできずに、親星の外層がGRB付随超新星を解明する大きな手がかりの一つになり得ることがわかった。観測されているGRB付随超新星を説明するためには、中心エンジンである、ブラックホール降着円盤からの円盤風が絞られた状況が必要不可欠で、親星の質量には寄らず回転が早いことが必要なこともわかった。 今年度の主な研究実績としては、上記の内容をまとめた論文が、国際査読誌 The Astrophysical Journal に、主著者として受理、出版された。また、この論文の内容は、East Asian Young Astronomers' Meeting 等の国際会議で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GRB付随超新星の観測を説明するモデルとしてcollapsar モデルの研究を進めてきた。しかし、その研究過程の中で、当初の予想とは違い、観測を説明するには限られた条件が必要なことがわかった(Hayakawa & Maeda 2018)。この結果から、collapsar モデルでもGRB付随超新星とはならず、爆発に失敗した超新星や通常より暗い超新星など違う天体現象が起こり得ることも示唆された。 近年の観測では、爆発に失敗したと考えられる超新星が実際に発見されており、理論では中途半端な爆発をするものでも、通常の超新星より明るく輝く場合があることも示唆されている(Adams et al., 2017, Moriya et al., 2018)。しかしながら、完全に爆発に失敗してしまう超新星と、失敗したにも関わらず明るく輝く超新星が、どのようにして棲み分けられるのかははっきりわかっていない。 この問題を解決するキーとなるモデルとして、fall back モデルがある。fall back モデルは、爆発に失敗した物質が再度中心に残されたブラックホールや中性子星に降着することで、エネルギーを生み出すモデルである。このエネルギーによって失敗した超新星でも、明るく輝くことが示唆されている。これまでの研究の対象であったcollapsar モデルで用いてきた降着円盤のモデルはfall back モデルに応用できることが国際会議等で議論する中でわかり、現在、fall back モデルにこれまでの研究の計算手法を応用して、失敗した超新星と明るく輝く超新星の違いを探る計算を始めている。これらの現象が解明されると、従来考えられてきた重力崩壊型超新星以外の爆発プロセスに示唆が得られ、近年観測がされた重力波に関連して、ブラックホールや中性子星といった天体に対しても重要な知見を得られることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、fall back モデルの計算を行うために、SNEC (https://stellarcollapse.org/SNEC)やFLASH (http://flash.uchicago.edu/site/)といったオープンコードを用いて準備を進めている。一度弱い爆発を起こす計算を行い、その後fall back によって得られたエネルギーをこれまでのcollapsar モデルでの降着モデルを応用することで見積もり、再度爆発の計算に組み込む。この一連の計算で、実際にどのような超新星として観測されるかを一次元輻射流体計算によって解明する。また複数の親星にこの計算を適応することを計画しており、最終的にはどの星が、どのような中心天体を残し、どのような特徴を持った爆発をするかを理論的に解明する。さらに観測との比較によって、従来考えられてきた重力崩壊型超新星以外の爆発プロセスとしてfall back モデルが妥当であるか検証する。 このfall back モデルの計算により様々な超新星が説明できるのであれば、残されるコンパクト天体にも制限をかけることができる。これにより、近年観測が進められている重力波候補天体についても示唆を得られる。将来的には、恒星進化の理論で得られた親星の情報から、最終的に起こり得る重力波現象の予測まで大局的な視野での理解を目指していく。 最終的には、collapsar モデルやfall back モデル、そして従来考えられてきた重力崩壊型超新星のモデル等を組み合わせることで、現在観測されている様々な突発天体現象の多様性がどのようにして生まれるのか解明し、またこれまで発見例のない現象が予測されるか検証していく。
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