2017 Fiscal Year Annual Research Report
軸糸ダイニンにおけるモータードメインの構造および機能解析
Project/Area Number |
17J07553
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
戸田 暁之 大阪大学, たんぱく質研究所, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 軸糸ダイニン / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイニンは、微小管上をマイナス端方向へ移動する生体内分子モーターであり、細胞質ダイニンと軸糸ダイニンに大分される。細胞質ダイニンは細胞内の物質輸送を行い、軸糸ダイニンは鞭毛・繊毛の波打ち運動の駆動力となる。そのダイニンの分子モーターとして働く最小領域であるモータードメインは、約3300残基のアミノ酸からなる巨大なタンパク質であり、その分子サイズの問題から構造解析例は限定されている。本研究では、極めて構造解析例が少ない軸糸ダイニンに焦点を当てて、軸糸ダイニンのモータードメインの構造を原子分解能で決定し、軸糸ダイニン特有の運動機構を理解することを目指して研究を進めている。 昨年度は、軸糸ダイニンモータードメインの大量発現系の構築に取り組んだ。モータードメインは上記のように巨大であり複雑なフォールディングをしていると考えられるため、発現系には高度なシャペロン系を有するほ乳類細胞発現系を用いた。いくつかのヒト由来軸糸ダイニン(DNAH1、DNAH2、DNAH9)と緑藻クラミドモナス由来軸糸ダイニン(DHC9)において、コンストラクトを作製し、発現確認を行った。モータードメインをGFP融合タンパク質として発現させ、その蛍光から良好な発現を確認することが出来た。しかし、精製を行うと多くが不溶性となりサンプルを得ることは出来なかった。 また、軸糸ダイニン特有の運動機構を解明するという同じ目的で、緑藻クラミドモナス由来の軸糸ダイニンであるOADγのモータードメインの中の微小管結合部位(MTBD)とダイニン軽鎖(LC1)との複合体の構造解析も同時に進めた。両サンプルを大腸菌発現系を用いて調製し、結晶化実験を行ったところ、良質な結晶が得られた。さらにX線回折データの取得に成功し、最終的に1.7ÅでMTBDとLC1の複合体の結晶構造を決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、複数の軸糸ダイニンモータードメインの大量発現系を構築することが出来た。結晶化実験に適したダイニンモータードメインのサンプルの調製には至っていないが、まだ発現確認を行っていないモータードメインのコンストラクトもあるため、結晶化に適したサンプルのスクリーニングを行うための土台は構築できたと考えている。 また、OADγ重鎖のMTBDとLC1との複合体の結晶構造を原子分解能で決定できた点は、軸糸ダイニン特有の運動機構を解明する上で、重要な手がかりを得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、モータードメインのサンプルに関しては、さらに複数のモータードメインの遺伝子の大量発現系から発現確認を行い、結晶化に適したサンプルの調製するためのスクリーニングを行う予定である。その後、精製条件を確立し、結晶化実験に挑みたいと考えている。 OADγのMTBDとLC1の複合体の研究に関しては、プルダウン実験により結晶構造中での相互作用の確認と相互作用に重要な残基の特定を行いたいと考えている。
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Research Products
(4 results)