2017 Fiscal Year Annual Research Report
第四紀の気候変動に対応した哺乳類の季節性毛色変化に関する遺伝基盤と適応進化の解明
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17J07664
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木下 豪太 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 全ゲノム解析 / 系統地理学 / 適応進化 / 集団ゲノミクス / 表現型多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では冷温帯性哺乳類における季節性毛色変化の分子メカニズムと進化史の解明を目的としている。本年度は冬季に白化/非白化の多型が見られるニホンノウサギついて、ゲノムワイドな責任遺伝子探索のための1)冬季白化個体の全ゲノム情報の解読、2)集団ゲノミクスに向けたサンプル収集と地域集団構造の把握を行った。 1)全ゲノム解析にはChromium systemによる手法を採用した。富山県にて冬季白化している個体から、複数の臓器を採材し、100kbほどの良質のゲノムDNAを抽出することに成功した。HiseqX高速シーケンサーを用いて配列解読し、ScaffoldのN50が約30Mbの良質な全ゲノム情報を獲得することができた。全ゲノム解析に併せて、同一個体の組織を用いたRNA解析を進めている。 2)ニホンノウサギの白化/非白化の両多型が見られる地域集団を対象に、RAD-seq法によるゲノムワイド変異解析のため、野外調査とサンプル収集、DNA抽出からライブラリー作成までを進めた。ニホンノウサギの毛色多型は、本州の北部から日本海側地域に白化型、太平洋側の広い地域に非白化が分布していることが知られている。今回、北陸から山陰地方でセンサーカメラでの調査および猟友会・動物園などへの聞き取りにより、当該地域の沿岸部では非白化の個体が混じる、または局所的に優先することが判明した。一方で、日本海側で収集した糞サンプルをもとにY染色体の遺伝解析を行ったところ、新潟県糸魚川付近で2つの遺伝系統が接していることが明らかとなった。本年度は、新潟の内陸・中部・沿岸地域から両多型を含む96個体についてDNA抽出を行い、RAD-seq解析のため400-500bpの配列に富んだ良質のライブラリー作成までを完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初予定していなかったニホンノウサギの新規全ゲノム解析を完了することができた。これを計画していた集団ゲノミクスのリファレンスとして活用することが可能となり、冬季白化の責任遺伝子探索のための質の高い解析を実施できるようになった。また、予定していた集団ゲノミクスのサンプル収集準備実験も着実に遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得られたニホンノウサギの新規全ゲノム情報はスキャフォルドまでのアッセンブルに留まったため、国外の近縁種の全ゲノム情報を利用し、染色体レベルのアッセンブルおよびアノテーションを行う。哺乳類はゲノムサイズがおよそ3Gと大きいため、形質多型に連鎖するゲノム領域を探索するには相当の多型情報を取得する必要がある。そのため、ライブラリー作成の完了しているRAD-seqサンプルについて、当初予定していたよりも解析能力の高い高速シーケンサー(Hiseq4000)を用いて、充実したシーケンス情報の取得を行う。 また、予定していた動物園で飼育中のノウサギをRNA発現解析が困難となったため、全ゲノムリシーケンスや候補遺伝子領域のLong-range PCR等による別の解析に置き換え、候補遺伝子領域の探索を進める。
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Research Products
(2 results)