2017 Fiscal Year Annual Research Report
ドープ氷中のナノ・マイクロ液相の界面計測と分離への展開
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17J07704
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
稲川 有徳 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 電気泳動 / サイズ分離 / 氷 / 制限空間 / 粘性率 / ゼータ電位 / 不凍たんぱく質 / 界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、水溶液を凍結した際に生じるマイクロ~ナノサイズの凍結濃縮溶液(FCS)の物性解明とそれを利用した新規計測法の開発である。本年度は以下の検討を行った。 1)当該研究者らが考案した氷グレインバウンダリー(IGB)電気泳動法を用いて氷とAFPの相互作用の大きさを評価した。糖の水溶液を凍結させると、チャネル状のIGBが形成する。IGBの幅は温度により可変である。IGBの幅を変化させながらその中でAFPを修飾した粒子を電気泳動させたとき、氷とAFPの化学的相互作用があれば、IGBの幅が粒子径より大きくても泳動できなくなる。この閾温度を氷とAFPの相互作用のパラメーターとして評価を行った。 2)FCSにドープしたルテニウム錯体の消光反応速度の測定し、粘性率を算出した。また、蛍光相関分光法(FCor)によって測定した蛍光プローブの拡散速度からFCSの粘度を測定し、結果の比較を行った。凍結前のグリセロール濃度ciniが低くなるほど粘性率が大きくなる傾向が見られた。また、FCorによる測定においても、氷で囲まれたFCSの粘性率が同じ組成を持つバルクの未凍結溶液よりも大きくなることがわかった。この結果は粘性率の液相サイズ依存性が存在することを表している。 3)バルク氷中にマイクロチャネルを形成しその中を泳動するプローブ粒子の泳動速度から、氷のゼータ電位の決定を検討した。氷のゼータ電位の値が負の値を示したことから、氷表面は負に帯電していることがわかった。また氷のゼータ電位の塩濃度依存性やpH依存性も検討し、陰イオンの氷表面への吸着やOHダングリングボンドでのプロトン解離の議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すべての項目においておおむね順調に計画が進んでおり、ポジティブな結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
氷グレインバウンダリーのサイズチューナビリティを利用した氷/FCS界面の新規計測の確立を行う。これにより、揺らぎの大きい不安定な界面の新規計測法の開発に発展させる。また、ゼータ電位計測に用いたバルク氷中のマイクロチャネルを利用した新規分離場の開発により、水/水界面による新規分離法の確立やチャネルのサイズチューナビリティを利用した流れ制御による分離法の実現に挑戦する。
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Research Products
(4 results)