2017 Fiscal Year Annual Research Report
超音波による難治性潰瘍の非侵襲的モニタリングシステムの研究開発
Project/Area Number |
17J07762
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大村 眞朗 千葉大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 超音波 / マルチスケール / 組織性状診断 / 信号解析法 / 音響物性 / 皮膚 |
Outline of Annual Research Achievements |
超音波による皮膚組織のミクロな組織構造評価に向けて,外科手術にて摘出された正常ヒト皮膚および多種の病変組織(潰瘍,瘢痕,リンパ浮腫など)からの高周波超音波のエコー振幅包絡像の特徴を新たに整理した.組織性状の差を指標化するために,散乱特性を指標とした後方散乱係数の解析法および統計分布を用いた振幅包絡の統計解析法を適用した. 高周波超音波(10-50 MHz)において,正常皮膚組織の真皮における数 mm径の分泌腺や結合織などのテクスチャを観察することができた.潰瘍組織では,不良組織における炎症細胞浸潤に起因すると考えられるエコー像の不均一性などを観察できた. これまでに構築してきた自作の超音波スキャンシステムや臨床用の超音波診断装置での観察において,問題点の洗い出しを行った.そのために,皮膚潰瘍を有したラットモデルを用いた実験を実施した.臨床現場では,現実的には隔週での診察や損傷部位が様々であるなど,システムの最適化に制約を伴うためである. 臨床用の超音波診断装置を用いたin-vivoでの観察では,信号解析法を適用するためのRFエコー信号を計測し,潰瘍部の血流の有無を可視化することができたが,解析手法を高精度に適用するためには,自作システムの構築が望ましいと考えられる.自作の超音波スキャンシステムによるex-vivo組織の評価では,複数の高周波超音波(10-50 MHz)による潰瘍の3次元的特徴を観察することができた.超音波エコー信号の特徴に大きく関わる音響インピーダンスなどの音響物性の解析についても,生試料を対象とした80, 250 MHzの超音波顕微観察により可能であった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
散乱特性を指標とした信号解析法を適用することで,画像情報のみならず,真皮における炎症程度や真皮および真皮-皮下組織境界付近における線維化程度などを指標化できる可能性を得た.これにより,皮膚潰瘍組織のみならず,皮膚組織における他疾患への組織性状解析への応用も見込むことができた. 動物モデルやヒト検体組織に対して,超音波エコー信号を中心とした総合的な実験を行うことができたため,散乱特性解析結果と組織性状および音響特性の関係性について相互理解可能な実験データを得られた. 上述の実験から得られた知見を総合し,生体組織の形態・音響特性を反映した計算機モデルを構築できる.計算機モデルに対して,エコーシミュレーション法を検討することで,組織性状の指標化結果の妥当性を検証することができる.
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Strategy for Future Research Activity |
超音波エコー信号の特徴が生体組織の何を反映しているのかを理解するために,実信号計測のみならず,計算機ベースでのエコー信号シミュレーション法を検討している.今後,シミュレーションに用いる媒質モデルの三次元化を検討し,多種の組成および音響物性が異なる媒質(炎症や新生血管など)が混在した際のエコー信号の特徴を理解することを目指す. 実信号計測・解析について,複数周波数により取得した超音波エコー信号の特徴を詳細に解析し,皮膚組織および病変組織の観察および組織性状の指標化に適したシステム系の送受信条件の最適化を目指す. 組織学的特徴および信号解析法を適用した組織性状の指標化結果を比較検討し,in-vivoでの皮膚潰瘍の治癒経過の経時観察を目指す必要がある.そのため,引き続き動物モデルおよび臨床データの収集を行う.また,実信号計測用システムの改良なども計画している.
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