2018 Fiscal Year Annual Research Report
運動意思決定における非合理性の原因解明と意思決定支援システムの開発
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17J07822
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
太田 啓示 東京農工大学, 大学院工学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | ベイズ決定理論 / 神経行動経済学 / 運動の不確実性 / リーチング運動 / リスクテイク行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
高度なスポーツパフォーマンスや精緻な運動制御を実現するためには、意思決定を適切に行うことが不可欠である。それにも関わらず、ヒトは失敗確率の高い運動を計画してしまうことが繰り返し報告されている(Ota et al., 2015; 2016; O’Brien & Ahmed, 2013 など)。本年度はこのようなハイリスク行動を改善し、運動意思決定の最適化を支援する方法の開発に取り組んだ。ヒトは無意識の内に対戦相手の運動を模倣することが知られており(Naber et al., 2013)、他者の存在は運動・認知システムに大きな影響を与えている。そこで本研究では、仮想の対戦相手の存在により、最適な運動意思決定が誘導される可能性を検討した。実験課題として競争リーチング課題を開発した。この課題では、リスク下においてどこを狙って運動をするかという意思決定が求められた。実験参加者は、対戦相手なしで総得点を最大化する1 人課題と、対戦相手と総得点を競う対戦課題を実施した。実験の結果、1 人課題の際は、失敗確率の高い運動計画を選択するものの、相手と初めて対戦する際には、リスクを避けるような消極的な運動計画が取られることが明らかとなった。さらに、リスク最適に行動する強いコンピュータと対戦するよりも、リスク回避的に行動する弱いコンピュータと対戦する際に、最適な運動計画が達成されることが明らかとなった。この理由として、対戦相手の運動意思決定は参加者の意思決定に対して、非線形な影響を与えていることが確認された。以上の結果は、特に消極的で弱い相手との対戦が、運動意思決定の最適化を支援する可能性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、相手との対戦が運動意思決定の最適化を促すという結果が得られ、順調に研究が進んでいる。また、国内学会発表4件(内、招待講演2件)、国際学会発表1件を行い、研究成果を広く公表できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、対戦相手がもたらす効果の妥当性として、かなり消極的な相手を設定するとともに、相手の観察条件や相手との協力条件おいても、同様の効果が得られるか否かを検討する。これらの検討により、運動意思決定の最適化を支援する最も効果的な相互作用様式が何かを明らかにすることを試みる。
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