2017 Fiscal Year Annual Research Report
A study on wave-mean flow interaction in the oceanic surface boundary layer through direct numerical simulations of surface waves
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17J07923
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤原 泰 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | Langmuir循環 / 海洋表層乱流 / 水面波 / 波と流れの相互作用 / 数値シミュレーション / 非静力学自由表面海洋モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋表層の流れと水面波との相互作用で生じるLangmuir循環(LC)は海洋表層の混合を通して中長期的な気候を大きく変化させる役割を持つ。現在その研究においてはゆっくりと変化する流れ(表層乱流)のみを考え、それよりも速い流れ(波)の効果を外力のように表現する定式化(波平均系)が広く用いられているが、波平均系の近似の妥当性そのものが限られた状況でしか実証されていないという問題点がある。水面波を直接数値計算することでその検証を行うという目標のもと、本年度は (1) ある状況で再現されたLCの駆動機構の力学的解析と、(2) さらに高機能な数値モデルの開発を進めた。 (1) 前年度までに振幅の小さい波を表現できる数値モデルを用いたシミュレーションでLCの再現に成功していたが、その駆動機構、すなわち波がどのようにLCを強制するのかを詳細な渦度収支解析によって明らかにした。その結果得られたLCの駆動機構の解釈は、従来のLagrange的な理解と相補的な立ち位置となるEuler的な見方によるもので、波と流れの相互作用の理解をより進めうる重要な成果である。 (2) これまでの研究に用いていた汎用海洋モデルは、空間離散化の制約上小さい振幅の波しか再現できない、モデルの汎用性を重視した設計のため波のエネルギーの数値的減衰が生じる、という2点で本研究の目的に不十分であった。より幅広い状況のシミュレーションを行うために、鉛直方向に座標を変換し、また水面波に関連する項を高次精度陽解法で解く、という方針をとることで前述の2つの問題点を回避した数値モデルを新たに開発した。テストの結果、新モデルは大振幅の波を精度よく表現し、数値的減衰も無視できる程度に抑えられる、という結果が得られた。この水準の非静力学自由表面海洋数値モデルは世界に数例しかなく、世界最先端の数値的研究を行う基盤が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Langmuir循環の駆動機構はこれまで、波平均系が成立するという前提のうえLagrange的な視点から理解されてきた。これをEuler的な視点から記述することは、波平均系を用いない数値計算結果を解釈する上で大きな助けとなる。 また、当初の予定どおり「大振幅の波を高精度で表現する数値モデルの開発」と「入念なテスト実験」を完了することができた。これにより、今までの数値モデルで表現できなかった状況の数値計算を行うことができるようになった。 このように平成29年度の成果によって、波と流れの相互作用の数値的研究を進めるためのハード面(数値モデル)とソフト面(Eulerian解析)の準備を整えることができた。当初計画していたパラメタスイープ実験は行えなかったものの、パイロット実験は済ませており、実験・解析の準備が進んでいる。そのため、計画の進捗は概ね順調であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、平成29年度に開発した数値モデルをもちいて幅広いパラメタ範囲のもとLangmuir循環の数値シミュレーションを行う予定である。特に注目するパラメタとして、水面風応力と波の位相速度から求められるFroude数があげられる。これは流れが波に与える影響の大きさを特徴付ける無次元数と考えることができ、従来の波平均系ではそれがゼロの場合しか表現できない(波は流れの影響を受けない)。これに加え、従来から注目されていた、波の影響の大きさを特徴付けるLangmuir数とを変化させて数値計算を行い、乱流運動エネルギーの生成率を定量的に調査する。 これらの数値実験の結果の解釈においては波平均系および水面波表現系の適切な比較を心がけ、理想化したシンプルな実験設定での数値計算を行なってゆく方針である。最近は水面波を表現できる数値モデルを用いたLangmuir循環の研究がいくつか発表されるようになってきたが、その中には水面波を表現する数値計算で妥当なのか不明なまま「現実的」と呼ばれるような実験設定を用いたり、実験条件や結果の解釈で波平均系と比較をするにあたり十分な注意を払えていないような研究がある。本研究の結果によって、波平均系での研究成果がどこまで妥当なのかをより信ぴょう性高く明確に示すことをめざす。
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Research Products
(7 results)