2017 Fiscal Year Annual Research Report
フォトレドックス触媒を用いた立体選択的なフルオロメチル基含有スピロ化合物の合成
Project/Area Number |
17J07953
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
納戸 直木 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 有機フォトレドックス触媒 / フルオロアルキル化反応 / 多環芳香族炭化水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本報告者はまず、単純な多環芳香族炭化水素ペリレンが、可視光によって効率的に還元反応を促進する光触媒として働くことを発見し、新規ジフルオロメチル化試薬と組み合わせることでオレフィン類のジフルオロメチル化反応を達成できることを見出した。 この結果を踏まえ、報告者は目的とする「エナンチオ選択的なフルオロアルキル化反応」の達成を目指して、不斉触媒とフォトレドックス触媒の両方の能力を併せ持つ「有機不斉フォトレドックス触媒」の開発に挑戦した。しかし、先述のペリレンはその溶解性の低さから合成上取り扱いが難しく、そのままでは有効と考えられる有機不斉フォトレドックス触媒を達成することはできなかった。 一方で、報告者は有機フォトレドックス触媒の改良も同時に目指した。先述のようにペリレンは合成上有用な化合物ではないため、より取扱容易な多環芳香族炭化水素であるアントラセンをフォトレドックス触媒の基盤として選択した。種々の検討の結果、報告者はビス(ジアリールアミノ)アントラセンの誘導体が、従来のイリジウムフォトレドックス触媒やペリレンをも上回る反応性を示すことを見出した。さらに今回開発した触媒は、先述のジフルオロメチル化反応のみならず、多様なフルオロアルキル化反応にも応用可能であることがわかった。 以上の結果は、ペリレンに比べて合成上取り扱いの容易な化合物群のフォトレドックス触媒としての有用性を示しており、今後はこれらのパーツを取り入れた有機不斉フォトレドックス触媒の開発に挑戦を続けたいと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、報告者は多環芳香族炭化水素(ペリレンなど)の可視光フォトレドックス触媒としての有用性を見出した。このことは「エナンチオ選択的なフルオロアルキル化反応」という目的に対して、既存の触媒群を組み合わせるだけではなく、新しい合成戦略となりうる「有機不斉フォトレドックス触媒」の開発に繋がる可能性を示した。 先述のペリレンは合成上取り扱いが難しく、これを用いた有機不斉フォトレドックス触媒を達成することはできなかったが、その一方で報告者はビス(ジアリールアミノ)アントラセンの誘導体が、従来のイリジウムフォトレドックス触媒やペリレンをも上回る反応性を示すことを見出した。 このようなトリアリールアミンやナフタレン、アントラセンのような化合物は合成面でペリレンに対して優れている。そのため、報告者はペリレンに比べて優れた有機フォトレドックス触媒の開発に成功するとともに、さらなる有機不斉フォトレドックス触媒への活路となると考えている。そのため計画はおおむね順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、多環芳香族炭化水素であるペリレンやアントラセンを導入した不斉有機フォトレドックス触媒の合成を検討したが、これらの化合物の溶解性の低さ、反応性の低さなどから有効な触媒を合成することができなかった。一方で昨年度、ビス(ジアリールアミノ)アントラセンなどのフリーなアリール基を有するトリアリールアミン類が先述の化合物を上回る反応性を有することを見出した。また、これらのトリアリールアミン類は合成に用いる上でも多環芳香族炭化水素に比べて優れているなど、部分骨格としても優れた性能を兼ね備えている。 そのため本年度はまず、「フリーなトリアリールアミン骨格を有する不斉有機フォトレドックス触媒」を合成することに取り組む。さらに、用いる試薬の検討、触媒の誘導体の合成等が高い鏡像体過剰率を実現する上では重要であると考える。そのため、先述の触媒を合成した後は、様々な反応条件の検討を行う予定である。 また、先行研究の結果として、ビス(ジアリールアミノ)ナフタレンの誘導体が高還元力フォトレドックス触媒として有望であることも見出したため、これを用いた新規反応開発にも取り組む予定である。
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Research Products
(7 results)