2018 Fiscal Year Annual Research Report
フォトレドックス触媒を用いた立体選択的なフルオロメチル基含有スピロ化合物の合成
Project/Area Number |
17J07953
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
納戸 直木 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | フォトレドックス触媒 / ラジカル反応 / 含フッ素化合物 / 有機光触媒 / 水中反応 / ミセル |
Outline of Annual Research Achievements |
本報告者は、以前にペリレンやジアリールアミノアントラセンの誘導体が優れたフォトレドックス触媒として働くことを見出した。一方で、これらの化合物は反応性が十分高くないことが課題であった。そこで本報告者は、反応性の向上を目的として1,4-ビス(ジフェニルアミノ)ナフタレン光触媒を設計し、新規光触媒反応の開拓に取り組んだ。種々の測定の結果、今回開発した1,4-ビス(ジフェニルアミノ)ナフタレンは、以前頻繁に用いられてきたイリジウムフォトレドックス触媒、ペリレン、ジアリールアミノアントラセン誘導体などを大きく上回る還元力を示し、実際にこれらの触媒では達成できなかった室温下でのアルケンのモノフルオロメチル化反応を効率的に進行させることが可能であった。 また本報告者は、フォトレドックス触媒において未だ開発の進んでいない水中反応にも注目した。以前の水溶性触媒のデザインは、共有結合によるものが一般的であったが、本報告者は今回両親媒性分子を活用して超分子的に水溶性フォトレドックス触媒をデザインすることを着想した。開発した超分子型フォトレドックス触媒は、水への十分な溶解性と高い反応性を両立し、種々の光触媒反応を水中で行うことが可能であった。以上の結果は、トリアリールアミン骨格の光触媒としての有用性や、超分子的な相互作用による触媒デザインの有用性を示しており、今年度はジアリールアミノ基を取り入れた有機不斉フォトレドックス触媒の開発や、キラルな超分子空間を利用した不斉合成に続けて取り組みたいと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本報告者は、これまでの研究で多環芳香族炭化水素やジアリールアミノ基を有する化合物のフォトレドックス触媒としての有用性を見出した。ジアリールアミノ基は様々な有機分子骨格に導入することが容易な置換基であるため、不斉触媒とフォトレドックス触媒の機能を併せ持つ「有機不斉フォトレドックス触媒」の開発につながる可能性を含んでいる。このことは「エナンチオ選択的な光触媒反応」という目的に対して、既存の触媒群を組み合わせるだけのアプローチではなく、新しい合成戦略を示すことができると考えている。そのため当初の計画は順調に進展していると考える。 また最近では、研究室内の別のグループの超分子に関する研究と融合させることで、新たな光触媒のデザインに関する方法論や水中でのユニークな反応の開発の糸口を見つけており、超分子化学の光反応における有用性を発見している。この研究は、上記の戦略(有機不斉フォトレドックス触媒の開発)とは異なるキラルな超分子空間を用いた立体選択的反応の開発につながる可能性を示している。この戦略も、新しい不斉合成へのアプローチにつながる可能性がある。 以上の2つの戦略を用いれば、目標課題である不斉フォトレドックス触媒反応の開発に対する活路が開ける可能性は大きいと考えており、そのため計画は当初の期待以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本報告者は以前に、多環芳香族炭化水素であるペリレンやアントラセンを光増感剤として導入した不斉有機フォトレドックス触媒の合成を検討した。しかし、これらの化合物の溶解性の低さ、 反応性の低さなどから有効な触媒を合成することはできなかった。 一方で報告者は、これまでにビス(ジアリールアミノ)アントラセンやナフタレンなどが、優れた可視光増感剤として働くことを見出してきた。これらのジアリールアミノ基は、反応性に加えて部分骨格として合成に用いる上でも多環芳香族炭化水素に比べて優れているため、本年度はこれらの知見を活かして「ジアリールアミノ基とビナフチル骨格を組み合わせた不斉有機フォトレドックス触媒」を合成することに取り組む。さらに、用いる試薬の検討や触媒の誘導体の合成などの緻密な条件検討が高い鏡像体過剰率を実現する上では重要であると考えるため、先述の触媒を合成した後は、これらを行う予定である。 さらに報告者は、両親媒性分子とフォトレドックス触媒を組み合わせた超分子フォトレドックス触媒の開発にも成功している。そこで、キラルな構造を持つ両親媒性分子を用いることで、キラルな超分子空間を利用した不斉合成にも取り組む予定である。
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Research Products
(6 results)