2017 Fiscal Year Annual Research Report
構造学的解析に基づくLGI1-ADAM22複合体形成の生理機能の解明
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17J07958
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
宮崎 裕理 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | てんかん / LGI1 / ADAM22 / X線結晶構造解析 / シナプス間架橋 / てんかん変異モデルマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の研究計画に従い、構造学的解析に基づくてんかん関連リガンド・受容体LGI1-ADAM22複合体形成の生理機能の解明に向けて、生化学的な手法を軸に検討を行った。はじめに東京大学・深井周也准教授グループとの共同研究により得られたLGI1-ADAM22複合体のX線結晶構造を受け、私は特異性・定量性の高いin vitroの結合実験によって、各タンパク質の結合に関わるアミノ酸残基を決定し、詳細な結合様式を明らかにした。また、ADAM22のサブファミリータンパク質ADAM23が、ADAM22と共通の結合様式でLGI1と相互作用することを明らかにした。次に、結晶構造より示唆された、LGI1-ADAM22複合体がLGI1-LGI1結合を介した4量体(多量体)として機能する可能性に着目し、LGI1変異マウスを利用した検討によりこの可能性を検証した。検討の結果、LGI1-ADAM22/ADAM23複合体はマウス脳内で多量体として機能し、シナプス間を架橋することを明らかにした。また、家族性てんかん患者で報告されたLGI1の変異が、LGI1-LGI1結合不全を引き起こし、多量体形成を破綻させることで、てんかんを引き起こすことを明らかにした。本研究成果は以下の3点に要約される。1.これまで明らかにされていなかったLGI1-ADAM22/ADAM23の詳細な結合様式を明らかにした。2.LGI1-ADAM22/ADAM23高次複合体がシナプス間を架橋することで機能することを見出した。3.高次複合体形成の破綻、つまりシナプスの架橋不全は、既知のLGI1変異を原因としたてんかん発症機序に加えて、新たなてんかん発症機序であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度、てんかん関連リガンド・受容体LGI1-ADAM22の結合様式を決定し、その生理的役割を明らかにすることを目的として以下の検討を行った。はじめに、東京大学・深井周也博士との共同研究により明らかとなったLGI1-ADAM22複合体のX線結晶構造を基に、それぞれのタンパク質の相互作用面における、結合に寄与するアミノ酸残基を決定した。本検討により、LGI1-ADAM22の結合における疎水性相互作用の重要性を見出した。また、ADAM22のサブファミリータンパク質ADAM23との結合に関して、LGI1-ADAM22とLGI1-ADAM23間の相互作用面は互いに保存されていることが明らかとなった。次に、得られた結晶構造中のLGI1-ADAM22複合体は、1:1のLGI1-ADAM22複合体が、LGI1-LGI1相互作用を介して結合した、2:2の複合体(ヘテロ4量体)であることに着目した。結晶構造中のLGI1-LGI1相互作用に関わるアミノ酸残基の一部が、家族性のてんかん患者で報告されたLGI1変異のアミノ酸残基と一致していた。そこで、この変異LGI1(R474Q)を持つヒトてんかんモデルマウスを用い、マウス脳におけるLGI1-ADAM22/ADAM23高次複合体形成の意義を検証した。検討の結果、野生型マウス脳内では、LGI1-ADAM22/ADAM23高次複合体がシナプスを架橋することで機能することを明らかにした。同時に、てんかんモデルマウス脳では、LGI1-LGI1結合が低下し、高次複合体形成によるシナプス間の架橋が阻害されることで、致死的なてんかんを誘発することが明らかとなった。X線結晶構造から見出されたLGI1-ADAM22高次複合体形成が生理的な機能を有し、高次複合体形成の破綻がてんかんを誘発することをin vivoの実験で検証できた点は、当初の予想以上の成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で明らかとなったLGI1-ADAM22の詳細な結合様式を基に、種々の脳神経疾患の発症との関連性が報告されているLGI1のファミリータンパク質(LGI2-4)とADAM22の結合特異性の評価を行う予定である。過去に、LGIファミリータンパク質はいずれもADAM22と結合することが報告されているが、報告ごとに異なる実験系で結合評価が行われており、ADAM22との結合を同一の実験系内で比較した報告は無い。そこではじめに、野生型マウス脳を利用した生化学的な手法によって、ADAM22と生理的に結合しうるLGIファミリータンパク質を検証するとともに、in vitroの結合実験によってLGIファミリー間のADAM22との結合能の違いを比較する。次に、LGIファミリー間で結合に違いが見出された場合、その原因を構造学的な予測を基に検証する。具体的には、これまでの研究で得られたLGI1の結晶構造を鋳型にした、LGIファミリータンパク質の3次元構造予測(ホモロジーモデリング)を行い、ファミリー間に立体構造の違いがあるかを予測する。また、予測されたLGIファミリーの立体構造とADAM22の結合面に違い (ポケットの構造及び、アミノ酸残基の疎水性、電荷等) があるかを精査する。立体構造、結合面に違いが認められた場合には、ADAM22との結合に与える影響を、LGIファミリータンパク質の変異体を使ったin vitroの結合実験によって明らかにする。また、ADAM22サブファミリータンパク質であるADAM23、ADAM11についても同様の検討を行うことで、LGIファミリーとADAM22サブファミリーの結合特性を明らかにする。以上、LGIファミリーの生理的な機能の違いが、受容体であるADAM22サブファミリータンパク質との結合の違いによるものか、基礎的な知見を得ることを今後の方策とする。
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Research Products
(1 results)