2017 Fiscal Year Annual Research Report
非侵襲脳刺激による不注意状態の低減-マインドワンダリング抑制機能向上の観点から
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17J08004
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
梶村 昇吾 玉川大学, 脳科学研究所, 特別研究員(SPD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | マインドワンダリング / fMRI / 非侵襲脳刺激法 / 人工知能 / 機械学習 / 脳内ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,目の前のやるべきことから無関係な思考に注意がそれてしまう,「マインドワンダリング(MW)」と呼ばれる心理現象の制御機能を促進するための効果的な介入法を確立することを目的としている。その実現のために,【課題1】実験参加者の主観的な自己報告に代わる客観的かつ正確なMW測定法の開発,および【課題2】MWの制御にかかる脳科学的エビデンスを基に,非侵襲的に脳機能を操作可能な脳刺激法(tDCS)の適用による効果的なMW抑制方略の確立を目指し,それぞれについて成果を得ている。 成果1:課題1に対して,fMRIを用いて計測した注意課題中の脳活動データに対して人工知能アルゴリズムを適用することによって脳活動データからMW状態を検出可能なシステムを構築するために,MW研究の第一人者である英国ヨーク大学心理学科のJonathan Smallwood博士との共同研究として実施し,平成29年度はヨーク大学でのMRI利用環境を整えるとともにMRI操作トレーニングまで完了した。データ取得は平成30年6-7月を予定している。 成果2:成果1の進捗が若干遅れたため,平成30年度に実施予定であった実験を一部繰り上げて実施した。具体的には,受入機関である玉川大学にてtDCSのアップグレード版である高解像度tDCSが導入されたため,実施手技を獲得するとともに,高解像度tDCSとMW抑制訓練との併用が安静時の脳機能に与える影響について検討するためのデータを取得した。本データの解析は平成30年度に実施予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初,課題1のデータ取得は平成29年度に実施予定であったが,英国ヨーク大学でのプレ倫理審査プレゼンテーションや倫理審査,fMRI実施にかかるオペレーショントレーニングなどの手続きにより遅延が生じている。 一方で,MWの客観的な検出は本研究の中核的な課題であるため,成果1とは異なるアプローチを追加で考案し,そちらについては玉川大学にてすでにデータ取得を行なっている。こちらの計画では,脳活動および領域間連携を包含するマクロ指標である「統合情報量」と呼ばれる新指標を導入することによって,予測精度の向上を図っている。さらに,MWの検出に用いる脳活動データは,fMRIの新しい高速撮像法であるマルチバンドシークエンスを導入することによって,従来の測定法ではアプローチが難しかった相対的に高い周波数帯(例:0.20Hz-)で機能する脳領域間ネットワークの情報まで利用できるようにした。その結果,0.30-0.40Hz帯の脳活動データで算出した統合情報量を用いることで,従来のデータおよび脳活動を用いた方法よりも高い正答率でマインドワンダリングの検出が可能となった(従来:約60%,本手法:約75%)。平成30年度は,人工知能アルゴリズムの改善によって,さらなる性能の向上を目指す。 また,成果1の進捗が若干遅れたため,平成30年度に実施予定であった実験を一部繰り上げて実施した。具体的には,受入機関である玉川大学にてtDCSのアップグレード版である高解像度tDCSが導入されたため,実施手技を獲得するとともに,高解像度tDCSとMW抑制訓練との併用が安静時の脳機能に与える影響について検討するためのデータを取得した。本データの解析は平成30年度に実施予定である。 上記より,平成29年度の研究計画は全体的にみて期待通りに経過していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,6-7月に英国ヨーク大学の脳イメージングセンターにて課題1のデータ取得を行い,解析を進める。解析プロトコルは,国際電気通信基礎技術研究所 神経情報学研究室の指導を受けて作成する。 また,追加で考案したMW検出法について,検出性能の向上を目指してデータ取得および解析を進める。具体的には,高周波数帯には心拍・呼吸によるノイズが含まれるため,玉川大学のfMRIを用いて同時計測を行い,ノイズを除去した上でMWの検出解析を行う。 課題2については,平成29年度に取得したデータ解析を行い,高解像度tDCSとMW抑制訓練との併用によって安静時の脳機能に与える影響が促進されるかについて検討を行う。
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