2017 Fiscal Year Annual Research Report
Supernova Relic Neutrino Search in Super-KamiokaNDE
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17J08025
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
徐 宸原 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 核破砕事象の除去 / 中性子星合体のニュートリノ事象探索 |
Outline of Annual Research Achievements |
EGADS実験の成功により、スーパーカミオカンデ(SK)のガドリニウム計画(SK-Gd)の実施スケジュールが正式に決定された。30年6月からSK実験が停止し、タンク内にガドリニウムを溶かすための準備工事が始まる。ただし、今までSK第四段階の純水データを有効に利用すれば十分に有意義な物理研究ができる。 SKで現在観測された超新星背景ニュートリノ(SRN)のスペクトルは、エネルギー16MeV以下は殆ど宇宙線由来の核破砕バックグランドになり、30MeV以上は大気ニュートリノ由来の事象が支配的になる。29年度は、16MeV以下と30MeV以上のバックグランドの削減を目的にして解析を進めている。 29年度の前半は、最新のミュー事象再構成ツールを利用し、同位体生成物と宇宙線ミューの飛跡との時間差・距離を考慮した上、今までの核破砕事象の除去効率を21.6%向上させる事ができた。この結果は日本物理学会2017年秋期大会で発表した。ただし、除去手法をさらに改良するには、核破砕事象と伴うハドロンシャワーの飛跡を理解する必要がある。 29年度中には中性子星合体による重力波(GW170817)の発見という歴史的な発見があった。10月から、GW170817にに付随するニュートリノ事象について、SKで3.5MeVから100PeVまでの領域で事象探索と解析を行った。その結果はSKコラボレーション会議で報告した後、論文にまとめてThe Astrophysical Journal Lettersに投稿した。 29年度12月から、SRNスペクトルの大気ニュートリノ由来バックグランドの削減を課題にし、アメリカのオハイオ州立大学に渡り、SK-Gdの提唱者であるJohn Beacom教授と共同研究を行った。結果は30年度のSKコラボレーション会議で報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究進展は、全体的から評価すると当初の計画以上に成果があった。 まず上半期は本研究目的である超新星背景ニュートリノ観測におけるバックグラウンド除去のために、宇宙線ミュー粒子による酸素原子核破砕事象の解析を遂行した。新たな除去ツールの開発により、除去効率の向上に繋がった。 また10月には中性子星合体による重力波の発見という大ニュースが飛び込んできた。予測されるニュートリノのエネルギー領域は超新星ニュートリノと同様であることから、スーパーカミオカンデでのデータ解析に取り組んだ。残念ながら発見には至らなかったが、このエネルギー領域での世界最高の上限値を出し、責任著者として論文を発表した。 下半期には超新星ニュートリノの世界的権威であるオハイオ州立大学の John Beacom 教授と共同研究を開始した。これは超新星背景ニュートリノ観測における大気ニュートリノ起源のバックグラウンドの理解に重要な、脱励起反応によるガンマ線事象の同定に関する研究である。これまで定量的な評価がなされていなかったが、シミュレーションによる研究からガンマ線の識別が十分可能であることを実証した。今後は実際のスーパーカミオカンデにおけるデータ解析を行う予定であり、30年度中にはこの研究でも論文発表が十分期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
30年6月からスーパーカミオカンデ(SK)実験が停止し、タンク内にガドリニウムを溶かすための準備工事が始まる。博士課程の卒業時期を考慮した上、当初の研究計画にあったSK-Gdに向けたデータ収集システムとシミュレーションプログラムのアップグレードという点を変更した。今年度はSKの純水データを利用し、今までまだ未解決の物理課題に専念する。 そういう未解決の課題の一つとして、大気ニュートリノ由来のバックグランドの除去方法を開発するため、オハイオ州立大学の John Beacom 教授と共同研究を開始した。大気ニュートリノがSK検出器内の酸素原子核と反応すると、一部の事象は、ミュー粒子と脱励起ガンマ線が同時に生成される。そういった事象に、ミュー粒子とガンマ線を分別して再構成できれば、SRN探索において30MeV以上の大気ニュートリノ由来のバックグランドが大幅に削減されると期待できる。それに加えて、16MeV~30MeVにおいても、今までのSRNスペクトルでは、Cherenkov閾値以下のミュー粒子の崩壊事象(invisible muon)がバックグランド成分として残っている。そのバックグランド成分は脱励起ガンマ線と伴わない特徴を持ち、ニュートリノと酸素原子核の反応でミュー粒子とガンマ線が同時に生成される確率を測定できれば、SRNスペクトルに残るバックグランド成分をより精密に見積もることが可能となる。この研究はSK-Gdにも極めて重要である。さらに、T2K実験や他のSK解析にも精度と理解の向上に貢献できる。30年度のSKコラボレーション会議及び日本物理学会で、この課題の進捗を報告する予定である。また、30年度中にこの結果の論文発表も期待できる。 30年度の後半は、今まで超新星背景ニュートリノ(SRN)探索において改良した点と現在の結果を博士論文にまとめる予定である。
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Research Products
(7 results)