2018 Fiscal Year Annual Research Report
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17J08086
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
長久 広 山口大学, 創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 低酸素 / 代謝特性 / 加齢変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
若齢(10週齢)と高齢(20ヶ月齢)マウスに対し、持続的低酸素と間欠的低酸素を施し、酸化的なヒラメ筋と解糖的な腓腹筋表層部に対する影響を検討した。持続的低酸素曝露は若齢マウスのヒラメ筋においてMyoD mRNAの発現を増加させ、低酸素に適応するためにサテライトセルが必要である可能性が示唆された。この活性化には同時に発現が増加したBDNFが関与していると考えられるが、有意ではないけれども同様にMyoD mRNAの増加を示した高齢マウスヒラメ筋と若齢マウス腓腹筋表層部においてBDNF mRNAの増加は見られなかった。 有意な毛細血管密度の増加は高齢マウスヒラメ筋においてのみ見られ、この結果はVEGF-A mRNAの増加を示したリアルタイムRT-PCRの結果に一致している。このVEGF-A mRNAの増加はnNOS mRNAの増加と同時に生じており、両因子の間には有意な相関関係が見られた。このことは、筋細胞膜に存在するnNOSによるNOの産生が血管新生のために必要である可能性を示唆している。持続的低酸素条件と比較した時、間欠的低酸素条件の若齢腓腹筋表層部において、VEGF-A mRNAの有意な増加が見られた。このVEGF-Aの増加はeNOS mRNAの増加と有意に相関しており、間欠的低酸素がeNOS-VEGFの経路で血管新生を促進する可能性を示している。更に間欠的低酸素条件の若齢腓腹筋表層部では、コントロールと比較して有意なFGF2 mRNAの増加が生じた。FGF2は内皮細胞増殖の促進及び内皮細胞の管状構造への変化を誘導することで血管新生に関与する。これらの結果は間欠的低酸素曝露が、持続的低酸素曝露とは異なる方法で血管新生をもたらすことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、2編の論文の投稿を行い2編とも海外の査読付き雑誌において出版された。このうち1遍は、平成29年度から実験を推し進めてきた低酸素曝露に対する骨格筋の応答を見た研究であり、もう1編は共同研究者である大学院生の協力のもと行った骨格筋の痛みとサテライトセルに関する研究である。さらに、これらの論文投稿の他に国内において2つの学会発表を行った。また現在、山口大学の博士課程を修了し、研究拠点を移動して新しい研究に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、研究機関を熊本大学発生医学研究所に移し、より根本的な骨格筋の部位による差異の分子基盤の解明に取り組む方針である。骨格筋の部位差は、先行研究において肢の筋の遅筋や速筋等の筋線維タイプの違いに基づいて多く研究されている。しかし、肢の筋以外の研究は乏しく、全身の筋の部位差に着目した研究は数少ない。この部位差に関して、特に運動器である骨格筋の機能を維持するために重要な筋線維の萎縮耐性の違いに着目した研究を行う。この分子基盤の解明は、筋ジストロフィーを含む疾病やサルコペニア、トレーニング等へと応用可能な研究課題であると考えている。
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