2017 Fiscal Year Annual Research Report
1細胞時系列解析の確立による、細胞の運命決定における概日時計の役割の解明
Project/Area Number |
17J08107
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鳥井 孝太郎 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 概日時計 / 1細胞トランスクリプトーム / 細胞運命決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
再生医療研究の隆盛は、分化全能性を持つ植物細胞がどのように運命を決定するのか、その解明の機運を高めている。中でも、植物特有の運命決定機構よりも、動物と親和性のある機構を解明することは、再生医療研究への寄与や動植物の垣根を超えた知見を示すことができるため非常に有益である。そこで、生物種を超えて広く存在し、動物細胞の運命決定に広く関わる機構として概日時計に注目した。概日時計は約24時間の周期性を生み出す計時機構であり、動植物では主に転写因子をコードする時計遺伝子群によって構成される。植物の多様な生理現象がこの概日時計による制御を受けているが、細胞の運命決定との関係は未だ不明である。そこで、本研究では植物細胞の運命決定過程における概日時計の機能解明を目指し、研究を進めた。 分化細胞の脱分化と再分化を誘導する系を導入し、細胞運命決定における概日時計の寄与について調べたところ、時計遺伝子変異体では再分化が大きく阻害された。そこで、再分化における概日時計の役割を調べるため、再分化誘導過程における時計遺伝子の発現パターンを解析したが、明瞭な変化は見られなかった。そこで、複数の細胞を対象とした解析では様々な細胞種が混在する再分化過程の解析は難しいと考え、1細胞トランスクリプトーム系を導入し、得られた発現データの解析を行った。その結果、再分化やその前段階である細胞分裂に先駆けて、時計遺伝子の発現が大きく変化していた。ある種の時計遺伝子の発現が減少する一方で、大きく増加するものもあり、特定の時計遺伝子の発現パターンが分裂とその後の分化に影響を与える可能性が示された。このような現象はES細胞でも示唆されており、進化的には独立な動植物の概日時計が同様の仕組みで細胞運命を制御する可能性がある。今後は、より詳細な概日時計による細胞運命決定の制御機構について解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は1細胞解析系の導入とサンプリングまでを見越していたが、実際には得られた発現データの解析まで行うことができた。トランスクリプトームデータの解析にはプログラミング言語の習熟が必須であり、当初は大きな課題と捉えていたがこの一年で並みのデータを扱えるようにはなった。
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Strategy for Future Research Activity |
シングルセルトランスクリプトームにおける時系列解析は、様々な手法が報告されているが未だ決定的なものがないのが現状である。そこで、新規解析系の立ち上げを行う。立ち上げにはコンピュータサイエンスの更なる習熟が必要であり、その勉強に努める。
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