2018 Fiscal Year Annual Research Report
1細胞時系列解析の確立による、細胞の運命決定における概日時計の役割の解明
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17J08107
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鳥井 孝太郎 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞運命決定 / 概日時計 / Single cell RNA-seq / PeakMatch |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、Single cell RNA sequencingの導入と新規時系列解析アルゴリズムの開発により、概日時計による細胞運命決定制御機構を明らかにすべく実験を行った。すでに前年度までに得ていた1細胞RNA-seqデータを解析し、擬似的な時間軸上での時系列解析を行っていたが、約24時間周期の概日リズムを観察するには実時刻上での解析手法が必須であった。そこで、バルクデータと1細胞データのマッチングを行い、擬似的な時間軸に実時間情報を割り当てる系"PeaKMatch"を開発した。この系を使うことで、細胞の運命が巻き戻り初期化された細胞では一時的に概日リズムが止み、運命決定が進行する直前にリズムの振幅が始まる現象を捉えた。また、このリズムの再生は細胞運命やエピジェネティックな制御、細胞分裂などの制御に先駆けておこることがわかった。さらにリズムの再生に関わる時計因子の制御標的を明らかにすべくChIP-sequencingを行ったところ、やはり、細胞運命決定やエピジェネティックな制御、細胞分裂に関わる因子が優位に蓄積されていた。このことは、概日時計の再生が細胞運命決定に先駆けて起こり、様々な制御経路を介して細胞分化を制御していることが明らかになった。また、概日リズムの再生を誘導する因子としてブラシノステロイド関連の因子が考えられたため、その関係をChIP-qPCRなどを行い確認したところ、初期化された細胞でこの因子が時計遺伝子の発現を制御することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在、学術振興会に提出した申請書に記載された全計画を実施し終え、その全てにおいて有益な結果が得られた。具体的には分化誘導系の導入、Single cell RNA sequencingの導入、新規時系列解析アルゴリズムの開発、そしてこれらを踏まえた概日時計制御による細胞運命決定機構の証明の全てを終えることができた。さらに論文誌への投稿もすでに行っており、次の計画に向けた実験も初め、当初の計画以上の進展があったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はリバイス実験を中心に行っていく予定であるが、今回の研究成果から見えた様々な興味深い現象を改名する研究も行っていく予定である。具体的には光合成を行う葉肉細胞特異的に働く時計遺伝子が葉肉細胞の分裂・分化に与える影響の解明や、植物の分化全能性の発揮に概日時計がどう関わるかなどのテーマを中心に研究を進める予定である。
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