2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of noncontact droplet manipulation method by photochromic interfacial flow
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17J08117
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
武藤 真和 東京理科大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | フォトクロミズム / 光応答性界面活性剤 / 機能性材料 / 混相流 / 界面流動 / 液滴操作 / 物質輸送 / マイクロ流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
界面流動による反応の高効率化を狙った混相流型マイクロ流体デバイスでは,DNAや血液を封入したナノ・ピコリットルの微小液滴から不良サンプルや特定ウイルスを摘出する,特定個数の液滴の選択的な操作・分離が必要とされる.そこで,光応答性界面活性剤を添加した液滴に光を照射することで,内部分子の異性化により界面物性を能動的に制御できるフォトクロミズムに着目した.本研究では,フォトクロミズムを有する「フォトクロミック界面流れ」を駆使することで,幅広いサイズの液滴に対応した非接触液滴操作の実現を掲げている. 研究初年度の平成29年度は,特定波長の光を液滴に局所照射できる2波長縮小光学系を開発,液滴操作の能否を確認し,液滴サイズの変化に伴う操作特性を調査した.光の照射と標本の顕微観察を同時に行えるように,光学系は可視光・紫外光の独立2光軸が顕微鏡内の光学フィルタと対物レンズを通して標本に焦点を結ぶように構築された.また,操作に向けて,界面活性剤濃度や照射光波長の変化に伴う界面張力の変化量を懸滴法により計測した. 液滴操作に関しては,mmサイズの円筒形状のガラス管内に存在するμLの液滴が紫外光照射部へ向かうのに対し,可視光照射部からは避けることから,波長により引力と斥力の切替が可能なことを確認した.さらに,操作時の駆動に要する力は液滴サイズに依存しないと一般的に推論されているが,液滴サイズを大きくすると移動量が減少傾向を示すことを実験的に確認した.これは,当初,液滴とガラス管の接着面積に依存する壁面せん断応力に依るものと考えられた.しかし,液滴が等速直線運動から特定の時間で減速して静止する傾向を観測し,この時間は液滴サイズへの依存性を示した.よって,界面活性剤の異性化分子が液滴駆動に伴って移流し混合することで誘発される,サイズ依存の減速効果が原因であると数式的見解から示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度では,液滴の非接触操作と観測が可能な2波長縮小光学系を利用した実験システムを構築し,スケール効果による操作特性を評価した点で,当初予定していた計画を全て遂行しており,現在までの進捗はおおむね順調に進展していると評価できる. しかしながら,液滴駆動が非熱プロセスなことを証明するために液滴の光吸収による温度上昇をレーザ誘起蛍光法から計測する目標を副次的に掲げていたが,計測対象とする任意断面の温度場には奥行き方向の情報が含まれるために計測が困難であった.さらに,構築した実験システムでは高倍率の対物レンズを用いて光源をμmサイズまで縮小露光できるので,上述の研究実績に加えて来年度の計画として予定していた,ガラス管内に存在するnL-pLの液滴の操作を試みた.液滴サイズを広い範囲で変更した際の駆動に要する力を実験及び理論から比較し,駆動原理を解明することを目的としていたが,実験では,界面張力の影響が顕著となるスケール効果により,操作特性がガラス管壁面の濡れ性に強く依存することでデータの再現性が低くなった.そのため,液滴 (水) をそれと混ざり合わない連続相流体 (油) の自由界面上に浮かべた状態での (液-液界面における) 操作を試みたが,紫外光を液滴に照射するとエマルションの解乳化により混ざり合ってしまうために実験の続行を断念した. 以上から,駆動因子の解明にあたっては液滴サイズを変えることではなく他のアプローチから実施する必要があるため,今後の研究の推進方策を研究計画立案時から変更することにした.
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Strategy for Future Research Activity |
操作対象や目的に応じて操作手法を選定する際には,液滴の駆動に要する力 (液滴サイズや駆動速度に影響) や駆動メカニズムの知見が必要不可欠である.そこで,今後の研究として下記の推進方策をとる. まず,力の解明に関しては,ラプラス圧から導かれた液滴駆動の物理式と動的接触角の計測データを用いることで定量評価を試みる.ここで,導出済みの液滴駆動の物理式には液滴サイズ,異性化分子の混合,壁面せん断応力の影響が含まれていないので,それらを複合した式を再構築する必要がある.異性化分子の混合については,目視で観測することが困難であることから,今後は数値解析か核磁気共鳴装置を用いた詳細な調査が必要とされる.さらに,動的接触角の計測については,今年度に開発した懸滴法の装置を改良することで実施する. 続いて,駆動メカニズムの解明に関しては,液滴駆動がガラス管壁面の濡れ性に強く依存することから,それらの接触面と (液滴・気体・固定壁面の3相が共存する) 接触線の顕微観察を実施する.調査対象とする理由は,接触線の移動が液滴駆動を誘起するため,接触線近傍の接触面に流れ込む流動の微視的な観測が駆動メカニズムの解明に繋がると予測されるからである.この流動場の可視化にはPIV計測法を用いるが,円筒形状のガラス管では取得画像が歪んでしまうことから,ガラス管と同屈折率であるPDMS (Polydimethylsiloxane) を用いて壁面形状を平面にすること (インデックスマッチング) で,界面挙動のより詳細な計測を試みる. 以上の調査により,せん断応力や異性化分子の混合による影響を含む液滴駆動の力と駆動メカニズムを複合的に調査することで,最終的な目標であるフォトクロミック界面流れを用いた非接触液滴操作法の確立を目指す.
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Research Products
(3 results)