2017 Fiscal Year Annual Research Report
緑藻クラミドモナスにおける二酸化炭素環境に応じた葉緑体レトログレードシグナル機構
Project/Area Number |
17J08280
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
豊川 知華 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
Keywords | 無機炭素濃縮機構 / ピレノイド / 緑藻クラミドモナス / 光合成 / CO2シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
CASの葉緑体内でのCO2濃度の変化に応じた局在変化を知るため, CAS-Clover融合タンパク質を発現する緑藻を作出した。共焦点レーザー顕微鏡を用いて、CASの局在をより詳細に観察することに成功した。それにより、CCMが誘導されるCO2欠乏時にはピレノイド内部のピレノイドチューブに局在することが強く示唆された。また、CASが眼点にも局在することが明らかとなり、走行性に重要なCa2+センシングを担う可能性が示唆された。これらの結果を論文にて報告した(Protoplasma, 2018)。 CASと同様にピレノイドへと局在を変化させるタンパク質LCIBについても、局在変化を制御する因子を明らかにすることを目的としている。lcib変異株へLCIB-Clover融合タンパク質を導入した相補株の作出に成功した。薬剤耐性遺伝子のランダム挿入を行い、LCIBの局在異常変異株のスクリーニングを行なってきた。現時点では、6株のLCIB局在異常変異株が取得できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CASの細胞内局在がより詳細に明らかになり、この結果は論文にて報告した。CAS-Clover融合タンパク質を導入した株は、細胞内で安定性が維持されないため、安定的なCAS蛍光株の作出を試みている。また、LCIB-Clover融合タンパク質を、lcib変異株へ導入することで、LCIB蛍光株の作出に成功した。この株は細胞内で安定的に発現することが示されたため、現在はこの株を用いてLCIBの局在異常変異株をスクリーニングしている段階である。現時点で、LCIBの局在異常変異株はすでに6株取得できており、原因遺伝子の解析を行なっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
CASによる葉緑体レトログレードシグナル機構を解明するため、活性酸素種(ROS)とテトラピロールについて、薬剤添加試験と合成阻害剤添加試験を行い、CASからLCIAへの発現誘導に関わるシグナル因子を推定する。また、昨年度に構築した75,000株の変異株ライブラリーから、レトログレードシグナルに関与すると考えられる遺伝子の変異株を、逆遺伝学的にスクリーニングする。得られた変異株におけるLCIAの蓄積量を調べ、CASを介したレトログレードシグナル経路を明らかにする。 CASはCO2濃度と光に応答してその局在をピレノイドから葉緑体全体へと変化させる。一方、CCMに必須の炭酸脱水酵素と推定されているLCIBもまた、CO2濃度と光に応答してその局在をピレノイド周囲から葉緑体全体へと変化させる。本研究では、遺伝子タグのランダム挿入により、LCIBの局在異常を指標とした変異株スクリーニングを行う。LCIBの局在変化を制御する因子を同定し、未知のCO2センサーなど、LCIBの局在変化を制御する機構を明らかにする。
|
Research Products
(2 results)