2017 Fiscal Year Annual Research Report
マグノニクス技術の創成に資するスピン波生成・伝播・位相特性の電界制御
Project/Area Number |
17J08317
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
宇佐見 喬政 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
Keywords | マグノニクス / スピン波 |
Outline of Annual Research Achievements |
スピン波を情報伝達媒体として用いることで情報伝達に要するエネルギー損失を格段に低減できると期待されている。本研究では磁性の電界制御が可能な磁性/誘電体ヘテロ構造を持つマルチフェロイクスを用いることで、消費エネルギーの少ないスピン波の制御技術の構築を目的とする。 上記の目的を達成するため反強磁性/強磁性界面に着目した。強磁性領域で生成したスピン波が強磁性/反強磁性界面を通過する際に、その振幅・位相の変調効果が期待されるためである。強磁性/反強磁性界面を形成するためにFeRh規則合金の特異な磁気特性に着眼した。B2規則化したFeRh合金は室温において反強磁性状態を示す。ところがイオン照射などにより結晶構造にdisorderが導入されるとその部分のみ強磁性状態に変調可能であると報告されている。本年度はこのイオン照射の技術を用いてFeRh細線上に反強磁性/強磁性界面を形成し、スピン波伝播・強磁性共鳴の測定を実施した。 強磁性/反強磁性界面の近傍で取得したS11パラメータの周波数依存性はピーク構造を示し、磁場の印加に伴ってピーク周波数が高周波領域にシフトすることが観測された。このことから強磁性FeRh細線で強磁性共鳴の励起が確認された。一方S21パラメータの測定では同様なピークが確認されず、スピン波の伝播を検出できなかった。薄膜内に存在する磁気的な不均一性により強磁性領域のダンピングが極めて大きくなり、スピン波の伝播が抑制されていると考えられる。今後、上記の素子においてスピン波伝播を検出するためには、強磁性共鳴測定に基づいてダンピング定数を算出し、スピン波の伝播長を見積もり、それに適した素子構造を設計する必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を達成するためには明瞭な反強磁性/強磁性界面を有するスピン波伝播経路の形成が必要である。今年度、イオン照射の技術を利用して、FeRh規則合金薄膜の細線上に強磁性/反強磁性界面の形成を試みた。磁気光学Kerr効果測定の結果から明瞭な界面が確認され、界面が形成されていることが確認された。しかしながらスピン波の伝播は確認できなかった。一方で、素子の最適化は必要であるものの、界面の形成技術を確立したという点から上記の評価とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、イオン照射により形成した強磁性領域におけるスピン波の伝播を検出する必要があり、引き続きイオン照射により強磁性に変調したFeRh薄膜に強磁性共鳴測定を行う。これにより磁気緩和の指標であるギルバートダンピング定数を算出する。算出したギルバートダンピング定数を用いて、スピン波の伝播長を見積もり、素子の設計に反映し、素子の最適化を目指す。
|