2017 Fiscal Year Annual Research Report
神経疾患発症におけるリソソーム系タンパク質分解の関与解明
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17J08433
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
佐藤 正寛 熊本大学, 大学院薬学教育部, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | microautophagy / halotag / adeno-associated virus / neuron |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内タンパク質分解系は不要タンパク質を除去することで細胞内恒常性維持に重要な役割を果たしており,特に細胞増殖をしない神経細胞において不要タンパク質の除去は神経細胞機能や細胞生存に深く関わっている.私は細胞内タンパク質分解系の中で現在あまり研究の進んでいないミクロオートファジー (mA) 及びシャペロン介在性オートファジー (CMA) に着目した.最近CMAに関してはパーキンソン病に関与することが示唆されており,またmAに関しては一部CMAと同様の機序を有することが報告されている.私は独自に確立したmA,CMA活性評価法を用いて,神経変性疾患とmA,CMAとの関与解明を研究目的とする. mA/CMAの共通の基質であるGAPDHにHaloTag (HT)が付加したGAPDH-HTを発現する細胞に,蛍光色素を融合したHT ligandを処置することで細胞質に存在するGAPDH-HTのみが標識される.その後培養することでGAPDH-HTはリソソーム/後期エンドソームへと移行し,dot状集積として観察することができ,このGAPDH-HTのdot状集積がmA/CMA活性を反映している.今回in vivo実験系においてmA/CMA活性評価法を確立するために,尾静脈内投与により中枢神経系への遺伝子導入が可能なアデノ随伴ウイルス (AAV-PHP.eB) ベクターを用いて脳における神経細胞へのGAPDH-HT発現誘導を試みた.4週齢のICRマウスに尾静脈内投与 (5×10^11 vg/ml, 100 ul)し,その5週間後に脳を取り出し免疫染色法により発現確認を行った.GAPDH-HTは大脳皮質から小脳にかけて,広い範囲で発現していた.その発現は神経細胞のマーカーであるNeuNと共局在したが,それぞれミクログリア,アストロサイトのマーカーであるIba-1,GFAPとは共局在しなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までは培養細胞や初代培養神経細胞を使ったin vitroの研究を中心に行っていたが,今年度はin vitroの研究に加え,in vivoでの研究も行うこととなった.その中でもin vivo実験系におけるmA/CMA活性評価法の確立を主に行った.当初生後1日齢の新生児ICRマウスの側脳室内へAAVを投与 (1×10^13 vg/ml,2 ul) したが,投与部位,深さを目測で行うため,一部発現がみられたものもあったがそうではないものもみられた.そこで新生児への側脳室内投与より簡便で,安定した発現誘導が期待できる尾静脈内投与へ変更した.尾静脈内投与に用いたAAVは一般的なものとは異なり,AAV-PHP.eBというカプシドの変異により中枢神経系への嗜好性が高いものを用いた.さらにAAV-PHP.eBはSynapsinI promotorを有するため,脳の神経細胞特異的に目的遺伝子の発現を誘導することができる.まず投与から5週間後における新生児の側脳室内投与と4週齢への尾静脈内投与との発現部位を比較した.側脳室内投与したマウスは皮質及び海馬に発現が限局したものが多くみられたが,尾静脈内投与したマウスは皮質,海馬に加え中脳や小脳など広範囲での発現がみられた.それぞれ発現細胞を特定するために免疫染色を行ったところ,どちらも神経細胞のみで発現が誘導されていることが確認できたが,発現細胞の数,今後の発展性を鑑みると尾静脈内投与を採用することとした.今後の検討によりHT ligandの投与部位,時間を定め,神経変性疾患や精神病モデルマウスにおけるmA/CMA活性への影響を検討する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の検討によりマウス脳の広範囲にmA/CMA活性の指標となるGAPDH-HTを発現させることができた.今後はGAPDH-HTを蛍光標識することが可能なHT ligandの投与部位,投与してからの期間を検討することが必要である.In vitroにおいてHT ligand処置時間は24時間であることから,in vivoにおいても24~48時間が妥当であると考えている.投与部位に関しては,現在in vitro実験系においてうつ病モデル細胞におけるmA/CMA活性への影響も検討しているため,それに関連した部位である皮質,海馬にしようと考えている.HT ligand投与後のマウスにおいて脳の冠状切片を作成し,共焦点顕微鏡で観察し細胞内にGAPDH-HTのdot状集積が観察されれば,mA/CMA活性評価法の確立とする.In vivo実験系においてmA/CMA活性評価法が確立できれば,拘束ストレスやコルチコステロンの連日投与によるうつ病モデルマウスを作製後,それらマウスにおけるmA/CMA活性を評価する予定である.それに加えて,遺伝子改変などを用いた神経変性疾患モデルマウスでのmA/CMA活性評価も行いたいと考えている.当研究室において特定のタンパク質を小脳へ過剰発現させることで脊髄小脳変性症のモデルマウスを作製することに成功している.今後はうつ病などの精神疾患及び脊髄小脳変性症などの神経変性疾患におけるmA/CMA活性評価を行う予定である.
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