2018 Fiscal Year Annual Research Report
神経疾患発症におけるリソソーム系タンパク質分解の関与解明
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17J08433
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
佐藤 正寛 熊本大学, 大学院薬学教育部, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | microautophagy / LAMP2A / Parkinson's disease / glucocerebrosidase / neuron |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は①パーキンソン病モデル細胞におけるCMA/mA活性への影響,②小脳の神経細胞特異的なLAMP2Aノックダウンによるマウス運動機能への影響を検討した.①グルコセレブロシダーゼはリソソーム内に局在する加水分解酵素であり,グルコセレブロシドをグルコース及びセラミドへ分解する.先天性代謝異常症であるGaucher病において初めてグルコセレブロシダーゼの変異が確認されたが,グルコセレブロシダーゼ変異による機能損失はパーキンソン病のリスクファクターでもあることが報告されている.またα-synucleinはプレシナプスに多く発現するタンパク質であり,パーキンソン病の病理学的特徴であるレビー小体の主成分である.さらにα-synucleinの変異体はパーキンソン病の原因タンパク質として知られており,変異体α-synucleinの過剰な蓄積がオートファジー・リソソーム系を障害することが報告されている.本研究ではα-synuclein発現細胞においてグルコセレブロシダーゼ活性を低下させることでパーキンソン病モデル細胞を作製し,mA/CMA活性に及ぼす影響を検討した.②LAMP2Aはリソソーム膜上に局在する1回膜貫通型のタンパク質であり,基質タンパク質を細胞質からリソソームに取り込む働きを持つ.CMA活性はLAMP2Aの発現量に依存することから,LAMP2A発現量低下に伴うCMA活性の減少は細胞内タンパク質恒常性の破綻に繋がると考えられる.最近,マウス中脳神経細胞におけるLAMP2Aノックダウンにより神経細胞の脱落及びパーキンソン病様症状を引き起こすことが報告された.本研究では神経特異的にLAMP2Aに対するmiRNAを発現するアデノ随伴ウイルスベクターを4週齢のマウスの小脳に投与し,4週ごとに運動機能を評価することで,LAMP2A発現低下による運動機能への影響を検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度はin vivo実験系におけるGAPDH-HTシステムの確立及びin vitro実験系におけるうつ病モデル細胞でのCMA/mA活性変化の検討を行った.今年度は前述した①パーキンソン病モデル細胞におけるCMA/mA活性の変化,②小脳の神経細胞特異的なLAMP2Aノックダウンによる運動機能への影響を検討した.①ヒト胎児腎細胞であるAD293細胞に野生型及び変異型α-synucleinを過剰発現させ,2日後にグルコセレブロシダーゼ阻害薬であるCβEを処置し,CMA/mA活性を評価した.その結果,α-synucleinの過剰発現のみでCMA/mA活性は低下し,CβEの処置下ではさらに強くその減少がみられた.また,グルコセレブロシダーゼをsiRNAによりノックダウンしたところ,同様の結果が得られた.以上よりα-synuclein過剰発現及びグルコセレブロシダーゼの機能低下がパーキンソン病を引き起こす原因の一端となりうることが示唆された.②小脳の神経細胞特異的なLAMP2Aノックダウンによる運動機能への影響を検討した.運動機能は長さ110 cm, 太さ1.5 cmの棒の上を歩かせ,踏み外した回数及び歩行距離により評価した.LAMP2Aのノックダウンにより4週目から運動機能が低下し,その後週齢を重ねるにつれて運動機能の低下がみられた.また冠状切片作製後,小脳の組織学的解析を行ったところ,miRNA発現細胞は顆粒細胞,プルキンエ細胞のマーカーであるNeuN及びCalbindinと共局在すること,またLAMP2Aノックダウンマウスにおいてプルキンエ細胞の脱落及び分子層の萎縮が観察された.これらの結果は,CMA活性の低下が小脳の神経細胞における変性・脱落を示唆するものであり,小脳の変性疾患におけるCMAの関与を示唆する重要な知見である.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の検討により①パーキンソン病モデル細胞においてCMA/mA活性が低下すること②CMAのマスター制御因子であるLAMP2Aの小脳神経細胞特異的なノックダウンにより運動機能が障害されることを明らかとした.以下にそれぞれの研究における今後の推進方策を示す.①α-Synuclein発現細胞におけるグルコセレブロシダーゼの阻害は,α-synucleinの蓄積によりLAMP2Aを介したタンパク質取り込みを抑制することでCMA/mA活性を低下させたと考えられる.しかしながら,CMA/mA活性が低下する詳細な機序の解明には至っていない.今後はCMA/mA活性に関連するタンパク質及びmRNA発現レベル,α-synucleinの蓄積について検討し,CMA/mA活性が低下するメカニズムを解明する予定である.また,初代培養中脳神経細胞においても同様にα-synuclein発現下でCβE処置及びsiRNAを用いたグルコセレブロシダーゼノックダウンによる検討を行い,より詳細なメカニズム解析を行う予定である.初代培養中脳神経細胞は胎生16日齢のラットより単離した中脳を分散することで作製する.CβEの濃度,処置時間は再度検討し,最適化したプロトコールに従い行う.②mA関連タンパク質であるTSG101ノックダウンによる運動機能への影響を検討する.過去の検討によりTSG101はmA活性を制御する因子として同定された.また,mAはCMAと同様に分子シャペロンであるHsc70を介して標的タンパク質の分解を行うことから,TSG101ノックダウンによるmA活性低下も細胞内恒常性を変化させ運動機能へ影響を与えるのではと考えた.TSG101において運動機能の低下がみられれば,LAMP2Aノックダウン群と並行してin vitro系と同様にCMA/mA関連タンパク質の発現量について検討する予定である.
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Research Products
(10 results)