2019 Fiscal Year Annual Research Report
腸内細菌代謝物を介した腸内細菌と宿主の共生~腸脳相関への展開と応用~
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17J08530
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
後藤 愛那 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2022-03-31
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Keywords | 腸内細菌 / アルツハイマー病 / 神経細胞分化 / アミロイドベータ / コレステロールトランスポーター / 糞便抽出物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、腸内細菌から宿主に受け渡される物質(主に細菌代謝物を想定)から、宿主の脳の発達や維持に関わる共生因子を探索し、その作用機所を解明することである。 これまで、腸内細菌抽出物(代謝物)を対象とし、その「機能性」から腸脳相関に関わる可能性のある物質を、《1 神経細胞分化誘導因子の探索》、《2 Aβ凝集調節因子の探索》、《3 コレステロールトランスポーター調節因子の探索》の3つの機能に注目して行った。その結果、《2 Aβ凝集調節因子の探索》について活性が認められたため、本年度はこの項目に絞り、解析を進めた。 《2 Aβ凝集調節因子の探索》においては、Thioflavinを用いたin vitroのスクリーニング系での評価を行なった。乳児糞便、成人糞便、普通食マウス糞便および高脂肪食マウス糞便抽出物を評価したところ、乳児糞便、成人糞便の複数サンプル、高脂肪食マウス糞便抽出物で活性が認められた。そのため、高脂肪食マウスの糞便抽出物について、第一段階としてC18カラムによる簡易的な分画を行なった。さらに、その陽性画分についてはHPLCによる分画を進め、特に活性が強い画分を分離することに成功した。今後、得られた養成画分についてはさらに分離を進め、候補物質の精製と物質道程を行う予定である。 また、成人糞便については,サンプル(個人)毎に活性に大きな違いがあったため、生活習慣や腸内細菌叢の影響を受ける可能性が高いと考えられる。今後、n数を増やし、活性と相関関係にある因子の特定を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、計画していたスクリーニングのうち、《2 Aβ凝集調節因子の探索》および《3 コレステロールトランスポーター調節因子の探索》を中心に、様々なタイプのサンプル(市販の精製物、ヒト糞便、マウス糞便、培養菌および培養上清抽出物)を評価した。その結果、複数の陽性画分を得ることができた。特に、《2 Aβ凝集調節因子の探索》について興味深い活性が認められたため、本年度はこの項目に絞り、解析を進め、活性物質の分離精製についても複数の段階を経て順調に進んでおり、今後、活性物質の同定まで到達することは十分可能であると考えられる。 しかしながら、成人糞便の解析については、活性と相関のある生活習慣因子や腸内細菌を見出すためには、かなりのn数が必要であり、サンプル回収の段階で時間を要する。その先の進展については未定の部分もあるが、より信頼性の高い相関関係を見出すため、n数を増やすことに重点を置いて進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
現在中心的行なっている《2 Aβ凝集調節因子の探索》については、HPLCによる陽性画分の分離が完了しているため、具体的な物質同定を念頭に置いた解析を進める。必要に応じて、異なる分離精製方法についても検討および共同研究による構造決定を進めていく予定である。物質同定が完了し次第、腸内の対象物質の体内への移行および臓器への蓄積を検討する。同時に、対象物質が腸内に存在する理由(腸内細菌による代謝・生成、あるいは宿主からの分泌、食物としての取り込み)について検討する。 《3 コレステロールトランスポーター調節因子の探索》についても、特定の菌の抽出物において、陽性画分を得ており、HPLCによる分画までを行なったところ、単独のフラクションではなく、ある2フラクションの混合物で活性が発揮されることを見出している。そのため、該当する2フラクションについて,異なる方法での分離を検討するか、あるいは活性に必要な物質の分離をそれぞれ進めていく。 一方、ヒトの糞便における活性物質の存在についても、非常に重要な検討項目である。これについては、n数を増やすことを最優先とし、サンプル回収を進めていく。また、これまでアンケートによる生活習慣の調査を行なってきたが、今後の結果と照らし合わせながら、必要に応じて調査項目を再検討していく。
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[Journal Article] Evolutionary adaptation in fucosyllactose uptake systems supports bifidobacteria-infant symbiosis2019
Author(s)
Sakanaka M, Hansen ME (equal contribution), Gotoh A, Katoh T, Yoshida K, Odamaki T, Yachi H, Sugiyama Y, Kurihara S, Hirose J, Urashima T, Xiao JZ, Kitaoka M, Fukiya S, Yokota A, Lo Leggio L, Abou Hachem M, and Katayama T
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Journal Title
Science Advances
Volume: 5
Pages: eaaw7696
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research