2017 Fiscal Year Annual Research Report
ピリジン類のカチオンリレーを利用した官能基選択的合成反応の開発
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17J08551
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
川尻 貴大 岐阜薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 芳香族アルデヒド / 化学選択性 / ピリジニウム塩 / カチオンリレー |
Outline of Annual Research Achievements |
アルドール反応は、カルボニル化合物間で炭素―炭素結合を構築するための有用な方法である。シリルエノラートを求核種とする向山アルドール反応は、交差アルドール反応の代表例である。しかし、アセトアルデヒドから合成したシリルエノラート(X)を求核種とした向山アルドール反応では、過剰付加や脱水などの副反応が併発し、目的のβ―ヒドロキシアルデヒド誘導体を選択的に得ることは難しい。ところで、シリルトリフラートとピリジン誘導体が共存すると、芳香族アルデヒドはピリジニウム塩(A)に変換される。この塩にXを反応させると、系中で生成する脂肪族アルデヒドがピリジニウム塩(B)に変換されるが、Aよりも反応性が低く安定であり、水でクエンチすると1分子のXが付加したβ―シロキシアルデヒド誘導体が選択的に得られた。この反応は、芳香族アルデヒドから脂肪族アルデヒドへ、ピリジン環を介してカチオンリレーする現象を利用しており、それぞれの塩(AとB)の反応性の違いを利用して、β―シロキシアルデヒドを効率良く合成できる。β位置換(Z,E)シリルエノラートを用いると、(Z)―シリルエノラートからはシロキシ基とβ位置換基がantiの立体を持つ生成物が、(E)―シリルエノラートからはsyn体が優先して得られた。 脂肪族アルデヒドとピリジン類から生成した塩はXとは反応せず、水でクエンチすると原料が定量的に回収されることからこの選択性が発現する。これを利用して、脂肪族アルデヒド共存下芳香族アルデヒドを選択的に化学変換できた。塩(B)はXに対しては安定であるが、TMSCNやTMSN3、アリルボロン酸エステルとは効率良く求核置換反応を起こし、1,3―ジオール誘導体が良好な収率で生成する。すなわち、芳香族アルデヒドと試薬由来のシリル基、ビニルエーテル、求核試薬の4成分が一挙に縮合し、高度に官能基化された化合物をワンポットで合成できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究実施計画に従って、主に「β―シロキシアルデヒド誘導体を合成する新規向山アルドール反応の開発」研究を推進した。反応条件のスクリーニングや基質適用範囲の精査を完了し、芳香族アルデヒド選択的な向山アルドール反応として確立できた。さらに、NMRやMSなどの機器分析を用いて反応中間体の構造決定にも取り組み、詳細な反応メカニズムを明らかにした。研究成果は積極的に学会およびシンポジウムで発表し(国内学会4件)、うち1件で発表賞を受賞することができた。また、国際学術誌(Chem. Commun., 2018, 54, 374-377.)に発表した。研究を遂行する過程でアセタールを基質とした場合にも芳香族アルデヒドと同様に、ピリジン類のカチオンリレーを介した反応が進行することを見出しつつあり、他の研究とも平行する所存である。
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Strategy for Future Research Activity |
[1]脂肪族アルデヒド共存下アセタール選択的に進行する向山アルドール反応の開発 アセタールを基質としてシリルトリフラートと2,2’―ビピリジルから生成するピリジニウム塩の求電子性を精査し、脂肪族アルデヒド共存下、アセタール選択的な求核種導入反応へと展開する。シリルエノールエーテルやアレーン、アリルシランを求核種として用いて、アルデヒド存在下保護体であるアセタールへの選択的求核種導入法として確立する。 [2]アセタールの脱離を鍵とした多置換ナフトール誘導体の合成 アセタールが置換したヘテロ環のアセタール脱離型環開裂反応を伴う骨格変換法を開発する。立体障害の大きなアセタールが置換することで、環開裂方向の制御が可能となる。また、アセタールを脱離基とすることは有機化学上興味深く、学術的に価値が高い。さらに、類縁基質を用いて、カチオンリレーを介した骨格変換法への展開を目指す。
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Research Products
(5 results)