2017 Fiscal Year Annual Research Report
デブリ被覆と氷河湖を導入した全球1km解像度氷河融解モデルの開発
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17J08617
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐々木 織江 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 氷河 / デブリ / 全球モデル / 熱収支方程式 / 気候変動 / 衛星観測 / 融解予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標である「全球1km解像度全球氷河融解モデルの開発」のために、先ず、全球90m解像度で氷河表面デブリの熱抵抗値分布データを作成した。解析では、始めにLandsat衛星データとAW3D30(ALOSによる地形データ)を用いて、氷河域をデブリ被覆域と裸氷とに分類し、その後、デブリ被覆域を対象としてデブリの熱抵抗値を衛星データにより推計した。熱抵抗値データの作成にはおよそ5,000枚のASTER衛星データを用い、解析手順を半自動化することにより、広域研究に適した手法を考えたが、極域などの一部地域で有効な衛星画像が得られないという問題が生じた。計画では、平成29年度に熱抵抗値分布データは完成する予定であったが、現在、Landsat衛星との併用によるデータ改善に取り組んでおり、次年度早期の完成が期待できる。 次に、作成したデブリの熱抵抗値分布を入力データとし、中央ヨーロッパを対象として、熱収支式を用いた氷河モデルの気候実験を行った。従来の全球氷河モデルが積算気温法によって融解量を計算していたのに対し、本研究では、熱収支式による融解計算を導入することによって、デブリが氷河融解に与える影響を陽に扱うことを可能とした。結果として、デブリの影響(厚いデブリによる融解抑制、薄いデブリによる融解促進)が適切に再現されることが確認された。また、積算気温法では再現が難しかった融解量の季節変動を見ることができる点も大きな成果であると言える。課題としては、氷河の面積変化が上手く再現されていない点が挙げられ、面積の縮小過程についてはさらなる検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全球ほぼ全ての氷河を対象として、氷河表面デブリの熱抵抗値分布を検出した。デブリについて調査した研究は過去に存在するが、全球規模で熱特性を検出した研究はこれまでになく、全球氷河モデルの発展のための重要な基礎データとなることが期待される。また、中央ヨーロッパを対象とした氷河モデルの開発では、広域モデルとしては初めて、熱収支式による融解計算を導入した。作成したデブリの熱抵抗値を入力値として使用したテストシミュレーションの結果から、デブリの働きが適切に再現出来ることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において、氷河表面デブリの熱抵抗値の全球分布を(一部の極域を除き)検出し、中央ヨーロッパを対象として熱収支式を導入した氷河モデルの開発に取り組んだ。今後は、将来気候実験及び国際誌への投稿に向け、氷河域の縮小過程の導入や、全球展開に向けたキャリブレーション手法のさらなる検討を行う。また、将来気候実験により、全球規模での氷河融解予測、さらに、氷河融解に伴う海面上昇や流域水資源量の変化について解析を行う予定である。
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Research Products
(4 results)