2017 Fiscal Year Annual Research Report
基底抽出を用いて反応拡散系画像の潜在構造を抽出する手法の提案
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17J08634
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂本 浩隆 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 画像処理 / マルコフ確率場モデル / ベイズ推定 / ハイパーパラメータ推定 / 基底抽出 / モード分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は基底抽出を用いて反応拡散系画像の潜在構造抽出を行う手法の開発を目指すものであった.現在は拡散系画像の潜在構造抽出に関する理論の構築について研究を行っている. 線形な拡散方程式で記述されるような画像の処理手法として,マルコフ確率場(MRF)モデルが提案されている.MRFモデルのエネルギー関数は,線形の拡散方程式の平衡状態を記述する方程式と対応し,MRFモデルのハイパーパラメータは拡散係数に対応する.このような対応関係のもと,ベイズ推定を用いてMRFモデルのハイパーパラメータ推定を行うことで,拡散係数のような物理系の情報(潜在変数)の推定を行う枠組みを研究してきた. 29年度においては,MRFモデルのハイパーパラメータ分布の期待値を計算することで,画像の取得の際に行われる平均処理が,その後の画像処理に与える影響を明らかにした.観測画像の取得の際には,画像の平均操作がよく行われてきた.しかし,このような操作がその後の画像処理に与える影響は非自明だった.今回用いたモデルでは,画像修復では画像の平均操作の影響はないが,一方でハイパーパラメータ推定に対しては精度が低下することを解析解から示すことに成功した.本研究結果は画像を用いた潜在構造抽出の問題に対して,平均操作が性能の低下を招きうるという結果であり,今後の反応拡散系の潜在構造抽出に対して重要な示唆を与える.本結果は英文誌Journal of the Physical Society of Japanに査読の上掲載された. さらに,MRFモデルについて従来は計算されていなかった周期的境界条件を取り除いたモデルについても厳密な解析ができることを示した.これは従来の潜在構造抽出の解析範囲を拡大する結果となっている.本結果は英文誌Journal of the Physical Society of Japanに査読の上掲載された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は基底抽出を用いて反応拡散系画像の潜在構造抽出を行う手法の開発を目指すものであった.現在は拡散系画像の潜在構造抽出に関する理論の構築について研究を行っている. 29年度までに概要で示したように画像の観測条件,境界条件などの影響を考慮した厳密な解析の検討,解析手法の開発を行っている.研究計画に対しては,画像の諸条件を考慮した解析を行うことは必須であり,順調に進展していると言える.また現在より複雑なモデルについて解析を行うための近似的な手法の開発を行っている.現在までの研究で用いているモデルでは,より複雑な反応拡散系の計算に直接利用できない可能性があるため,より複雑なモデルでも扱える手法の開発が必要であった.一般に従来のベイズ推定では,厳密な解析解が得られない場合,マルコフ連鎖モンテカルロ法などの計算量が重い手法か,変分ベイズなどの正しい解が得られる保証のない手法を用いる必要があった.今回の提案手法は計算量が比較的少なくでき,また解の性質を大きく変えるない手法であると考えられる.本結果については国内学会において発表され,現在査読付き英文誌への投稿を準備中である.本結果は当初計画に必要な内容であり,また汎用性の観点からは今回の研究以外にも用いることのできる可能性がある手法であるため,当初計画を上回る成果であると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は基底抽出を用いて反応拡散系画像の潜在構造抽出を行う手法の開発を目指すものであった.現在は拡散系画像の潜在構造抽出に関する理論の構築について研究を行っている. 今後は反応拡散系画像の潜在構造抽出を目指し現在までより複雑なモデルに関する解析,解析手法の開発を行う予定である.本目的においては,ベイズ推定に伴う計算量の問題を解決する必要があるため近似的ベイズ推定手法を用いることができる可能性があり,利用可能性について検討を行う.また現在までの進捗において開発中の手法を利用することで近似的ベイズ推定の問題を従来法に比べて有効に利用できる可能性があるため,検討を行う.その後,ベイズ推定にもとづく潜在パラメータ推定と,これまで検討した基底抽出にもとづく潜在パラメータ推定手法を比較する. また現在までの研究で検討した画像の観測条件の問題について,拡散系画像の潜在構造抽出を行う上で重要と考えられる空間解像度変化の影響を精査する必要があるためこの項目についても研究を行う.
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