2018 Fiscal Year Annual Research Report
大脳新皮質発生におけるp57インプリント鎖の役割の解明
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17J08651
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今泉 結 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | ゲノムインプリンティング / エピジェネティクス / 神経発生 / 大脳新皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノムインプリンティングはエピジェネティックな機構を介した常染色体上遺伝子の片アレル性発現と定義される。この現象は脊椎動物の中でも哺乳類にしか見られず、マウスにおいては約150、ヒトにおいては約80というごく限られた遺伝子についてしか見られない。これらインプリント遺伝子においては、発現抑制されたアレル(インプリント鎖)は機能を持たないと考えられてきたが、神経系においてはごく一部のインプリント遺伝子のインプリント鎖の抑制が一部解除され、この脱抑制が神経幹細胞の維持などに貢献している可能性が示唆されてきた。 父性インプリント遺伝子であるp57は、CDK阻害タンパクファミリーに属し、その母方鎖は脳の発生や機能制御において重要な働きをする。一方、発現抑制される父方鎖は機能を持たないと考えられていたため、詳細な解析はなされていなかった。しかしながら、本特別研究員はp57父方鎖の発現は胎生期においてわずかに検出されることを見出し、さらに、神経系特異的な父方アレルの破壊を行うと、甚大な脳発生の異常が引き起こされることを見出していた。この所見は、これまで知られていなかったp57 父方鎖の機能の存在を初めて示したのみでなく、脳全体の発生にインプリント鎖が必要不可欠であることを示唆する初めての成果である。この成果を踏まえ、当該年度は神経系特異的なp57 父方鎖破壊による脳の縮小がどのようなメカニズムで生じるのか詳細に解析した。これらの実験結果をまとめ、近日中に国際雑誌に投稿を行う予定である。 インプリンティングは非常に複雑な脳を持つ哺乳類にのみ見られる機構である。そのため本研究は特殊な哺乳類の脳の発生・成熟をインプリンティングという切り口で解明しようとする独自性に満ちた研究であり、その成果の先には、「哺乳類の脳がどう特殊なのか」という進化的理解を大きく前進させる可能性を秘めると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は様々なp57レポーターラインを導入し、p57父方鎖がどのような細胞群で発現しうるか、p57父方鎖のどのゲノム領域が重要なのかの検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、p57父方鎖が脳発生に貢献するメカニズムをさらに詳細に追求する。これらの研究結果をまとめたのち、「神経系特異的にゲノムインプリンティングを制御するメカニズム」を解明する。
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Research Products
(4 results)