2017 Fiscal Year Annual Research Report
集団的細胞運動の安定性と乱れのマイクロ流路を用いた定量解析と操作
Project/Area Number |
17J08690
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤森 大平 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 集団的細胞運動 / 細胞選別 / 細胞間接着 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では細胞性粘菌の発生における細胞間相互作用の実態を明らかにし、回転運動や細胞選別といった細胞集団としてのマクロな振る舞いと1細胞レベルの運動ルールというミクロな描像とを結びつけて理解することを目的とした。これまでの研究から、細胞間接着依存的に持続的なF-アクチン形成が誘起され、前方の細胞を追従できることを見出していた。一方で、細胞性粘菌は自ら分泌するcAMPに対する走化性により運動方向制御を行う。追従運動のcAMP依存性を確かめるため、cAMPを分泌しない栄養成長期の段階から集合期の接着分子を過剰発現する形質転換株を作出した。すると、集合期の細胞が栄養成長期の接着分子過剰発現細胞を追従する様子が観察された。さらに、精製した接着分子をシリカビーズ上にコートして細胞と接触させたところ、ビーズとの接着領域に持続的なF-アクチン形成が見られ、細胞は強い極性を維持した。以上から、細胞間接着に伴うF-アクチン形成の維持と追従運動は、cAMPに対する走化性とは独立した運動方向制御機構であることが示唆された。走化性運動と追従運動という二つの運動機構をどのように組み合わせて集団的な細胞運動を実現しているのか、予定柄細胞と予定胞子細胞の細胞選別に注目して解析した。細胞間接着を阻害したところ、各細胞タイプはよく混ざったままであった。一方で細胞外cAMPレベルを減少させたところ、予定柄細胞が細胞塊の外側に分離するものの頂端に集合しなかった。細胞間接着を模倣したビーズとガラスニードルによる人工cAMP濃度勾配とを同時に提示したところ、予定胞子細胞はビーズに依存した細胞極性を維持しやすいのに対し、予定柄細胞はcAMPに反応しやすかった。以上のことから、予定胞子は接着依存的な集団運動を維持する一方、予定柄細胞がcAMPに反応しやすいことで走化性により頂端に集合するという仮説を提唱するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
集合期の細胞は細胞間接着分子の発現とcAMPの分泌を同時に行なっているため、集団運動に対する両者の寄与を切り分けることは難しい。精製タンパク質を用いて細胞間接着を再構成することで接着依存的な側面とcAMP依存的な側面を切り分けることができた。細胞性粘菌において、接着依存的な運動制御機構を示唆する先行研究は存在するものの、直接的に示したものは存在しないため、この点に関して十分な新規性があると判断される。さらに、精製タンパク質を活用することで集団運動における接着依存的な動態とcAMP依存的な動態をあぶり出すことができ、各細胞の運動方向決定規則と集団としてのマクロなパターン形成を結びつけて理解する道筋がたった。
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Strategy for Future Research Activity |
予定胞子細胞が接着による極性を維持しやすい一方、予定柄細胞はcAMPに反応しやすい、という仮説をより確固とするために検証を重ねる。高さを約30マイクロメートルに制限することで細胞選別現象を単一焦点面で捉えることのできるマイクロ流路を作製し、細胞選別を単一細胞レベルでトラッキングできる実験系を構築する。この下で、細胞外cAMPや細胞間接着を阻害した場合に予定柄細胞と予定胞子細胞それぞれの運動にどのような変化が生じるのか一細胞レベルで検証する。また、マイクロ流路の利点を活かしてcAMPの濃度勾配を集合塊に提示し、予定柄細胞及び予定胞子細胞が接着シグナルと外場のcAMPシグナルのどちらを優先しやすいかを明らかにする。
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Research Products
(2 results)