2017 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の脳内で発現に雌雄差を示す神経ペプチド遺伝子の制御機構と生理的役割
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17J08702
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山下 純平 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 神経ペプチド / 性差 / 魚類 / 脳 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳内で発現に雌雄差を示す神経ペプチド遺伝子にコードされる神経ペプチドが魚類の経済形質の雌雄差に寄与しているのではないかとの考えのもと、行動や内分泌の制御に関わる脳領域である視索前野で発現に雌雄差を示す3つの神経ペプチドに着目し、それぞれの遺伝子の発現制御機構、作用機序、機能を明らかにすることを目的として研究を進めている。 まず、視索前野においてオスで高い発現を示す神経ペプチドの作用機序を明らかにするため、受容体のクローニングおよび、発現を解析し、受容体の発現部位を明らかにした。さらに、受容体の細胞内のシグナル伝達経路を培養細胞を用いたin vitroでの解析によって明らかにした。続いて、機能を解析するために変異体メダカを作出し、行動解析を行ったところ、オスで高い発現を示す神経ペプチドは、オス型の行動の制御に関わっていることが明らかとなった。 上記とは別の性差を示す神経ペプチドについても同様に、受容体のクローニングおよび、受容体の発現を解析し、発現部位を明らかにした。さらに、各種受容体の細胞内のシグナル伝達系を解析するため、各種受容体を発現するコンストラクトを作製した。 また、対象としていた神経ペプチド遺伝子のほかに同じく神経ペプチド遺伝子ITも視索前野で雌雄差を示し、性ステロイドであるアンドロゲンによる制御がみられることが先行研究により明らかとなった。そこで、ITについても、発現制御機構や作用機序、機能を解析することとした。その結果、ITのアンドロゲンによる制御は、キスぺプチン遺伝子の一つであるKISS2を介したものであり、視索前野のIT発現ニューロンは下垂体へ軸索を伸ばしていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数の神経ペプチド遺伝子を対象に解析を進めているため、遺伝子によって進行度合いが異なり、予定よりかなり早く機能を明らかにすることができた遺伝子もあれば、少し遅れている遺伝子もある。また、新たに解析対象に加えたITの解析も順調に進んでいるため、総合的にみると「おおむね順調に進展している。」といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
解析が遅れている神経ペプチド遺伝子の解析を中心に行う。受容体のシグナル伝達経路を細胞培養系を用いて明らかにするとともに、組織学的手法を用いて視索前野で産生される神経ペプチドの作用機序を明らかにすること目指す。さらに、機能を明らかにするために変異体メダカを作出する。また、組織学的手法によって作用部位が下垂体であった場合は、下垂体ホルモン産生細胞での受容体遺伝子の発現を調べるとともに、下垂体培養系を用いて神経ペプチドが下垂体ホルモン分泌にどのような影響を与えるか解析する予定である。
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