2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J08806
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷口 貴紀 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 四極子秩序 / NMR / 磁化 |
Outline of Annual Research Achievements |
PrTi2Al20に対してNMR測定及び磁化測定を行ってきた。前年度までに、Prサイトの周りの籠を形成しているAlサイトの超微細結合テンソルを完全に決定した。さらに、磁場を<111>方向に印加したとき、相転移に伴ったNMRスペクトルの分裂を観測し、分裂数から秩序構造を決定した。最近、磁場を<100>, <110>方向に印加したときに2 T付近に一次の磁場誘起相転移をNMR及び磁化測定から発見し、その解明が四極子に由来する量子臨界現象の理解に対して非常に重要であるので、新たな課題となっていた。 これまでの研究では、四極子秩序相は単一相であると考えられていた。その理由は、従来の磁場依存性のない四極子間相互作用のモデルにおいて、磁場を<100>に印加した場合、磁場誘起相転移は存在しないためである。そこで、新たに磁場に依存した強四極子間相互作用のモデルを構築し、Landau理論を展開した。この理論をもとに独自で構築したC++を使って、分子場理論による数値計算を行ったところ、相図の再現に成功した。この理論から、磁場誘起相転移の起源は、磁場に依存した四極子間相互作用とZeeman相互作用の競合であることも明らかになった。この結果によって、伝導電子と四極子に働く相互作用を理解するためには、磁場の効果を無視してはいけないことを示した。また、2 Tという小さな磁場で相転移を観測したので、四極子間相互作用のエネルギースケールは小さいことが示唆され、今後の量子臨界現象の研究には超低温測定が必要不可欠となることが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで、単一相と考えられてきた四極子秩序相において、磁場誘起相転移を発見した。これは、従来の磁場に依存しない四極子間相互作用では説明できない現象である。そこで、その詳細を調べるために、磁場の印加方向と大きさを精密に制御して、転移磁場や秩序構造の決定を試みた。 さらに、磁場に依存した四極子間相互作用を構築し、Landau理論を展開した。結果として、相図を説明することに成功した。これは、従来の伝導電子を介した四極子間相互作用の変更に迫る結果である。 これらの結果は重い電子系の領域で高く評価され、J-Physics国際会議においてBest Poster Awardを、第11回物性科学領域横断研究会(領域合同研究会) にて、2017年の最優秀ポスター賞を、J-Physics全体会議にて、最優秀ポスター賞を受賞した。
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Strategy for Future Research Activity |
PrTi2Al20は高圧領域で重い電子超伝導転移を示す。この超伝導転移は四極子揺らぎがクーパー対形成に重要な役割を果たしている可能性が高い。しかしながら、高圧領域で四極子を検出する微視的手法が確立していないのが現状である。 そこで、申請者らはNMRに注目している。NMRは多重極限環境の測定が可能なプローブである。この技術を使ってPrTi2Al20の超伝導を調べるには、これまでNMRで超伝導の研究を牽引してきた京都大学石田研究室の叡智と申請者がもつ四極子を検出するノウハウの融合が重要であると考えた。 今年度の前半は石田研究室に籍を移動して、超伝導の検出方法及び解析方法の技術を直接吸収する予定である。その後、PrTi2Al20の超伝導の測定を行いたいと考えている。
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Research Products
(5 results)