2018 Fiscal Year Annual Research Report
Anthropological Research on Peace-Building and Peace Keeping through Gift Exchange in Solomon Islands
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17J08813
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
藤井 真一 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 紛争解決 / ソロモン諸島 / ガダルカナル島 / 国内避難 / 日常性 / 貝貨 / ブタ / 贈与交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、平和的な社会関係の構築や維持・再生産に果たす贈与交換の働き(特にモノの役割)に注目しながら、「民族紛争」中のソロモン諸島ガダルカナル島民の生活戦略と紛争後の日常生活を解明することである。計画2年目にあたる2018年度は、下記の成果を得た。 (1)ガダルカナル島北東部において、紛争渦中における村落部での個人的な加害・被害経験の聞き取り調査を行なった。この調査から、国内避難行動と生活実態に関する新たな口述資料、紛争へ積極的に関与したガダルカナル島北東部出身の元戦闘員の活動実態について新たな口述資料が集積できた。 (2)交換財として重要なモノのひとつであるブタについて、ガダルカナル島北東部における人びとの認識に関する民族誌資料を得た。また、昨年度に引き続き貝貨の製作に携わり、貝貨の製作と使用に関する新たな民族誌資料を得た。さらに、ブタと貝貨という、社会関係の操作に用いられる二種類のモノへの着眼から、ガダルカナル島におけるブタと貝貨の交換可能性を考察した。 (3)昨年度の研究成果をもとに、国民統一・和解・平和省の職員らとソロモン諸島における平和構築の課題について討論した。彼らとの討論から、草の根レベルでの社会関係を修復するうえで贈与交換という行為が依然として極めて重要であるという認識を共有し、潜在的な対立感情を処理していくための課題を検討した。 (4)昨年度に日本語で発表した研究成果(真実委員会と在来の紛争処理との間の緊張関係に関する考察)をInternational Union of Anthropological and Ethnological Sciencesの世界大会にて口頭発表した。また、World Social Science Forumにて、ソロモン諸島ガダルカナル島北東部の人びとの紛争渦中における生存戦略と生活実態についてポスター発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた臨地調査計画を少し変更することとなったが、ソロモン諸島ガダルカナル島北東部において、紛争前後および現在の現地住民の日常生活に関する新たな口述資料を集積できた。また、社会関係の操作(平和的な人間関係の生成・維持・再構築)において重要な役割を果たすモノに関する現地資料の収集として、貝貨の製作と使用をめぐる民族誌資料ならびに認識人類学的観点からみたブタについての民族誌資料の収集ができた。 さらに、科研費採択以前から継続してきた紛争解決の研究と2017年度の臨地調査で収集した資料を踏まえ、移行期正義における紛争処理の地域特殊性および紛争渦中における生活実態について国際学会で発表したことから、成果公開も順調に進められたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に則って、ガダルカナル島西部および南部における臨地調査を実施する。これにより、ガダルカナル島全域における「民族紛争」の背景ならびに各地域住民の紛争認識を描き出し、マライタ側の先行研究の蓄積と総合して、ソロモン諸島における「民族紛争」の包括的理解を目指す。 また、マライタ島中部ランガランガ地域にて、貝貨製作の参与観察を行ない、ソロモン諸島における社会生成において重要な役割を担うモノのひとつである貝貨の現在について資料収集を行なう。
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Research Products
(9 results)