2017 Fiscal Year Annual Research Report
Evaluation and improvement of gross primary production using stable isotope of carbonyl sulfide as a tracer
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17J08979
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
亀崎 和輝 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 硫化カルボニル / 硫黄循環 / 一次生産量 / 二酸化炭素 |
Outline of Annual Research Achievements |
硫化カルボニルは植物の光合成によって取り込まれるが、呼吸で排出されないため一次生産量のトレーサーとして有用である。しかし、森林域において硫化カルボニルは植物に吸収されるだけでなく土壌微生物によっても分解されるため、森林域で減少する硫化カルボニルの濃度を用いて一次生産量を過大評価してしまうことが問題となっていた。そこで、本研究室のグループが世界に先駆けて開発した硫化カルボニルの硫黄同位体組成分析装置を用いて硫黄同位体比の変動から植物と土壌微生物の寄与を区別し、一次生産量の評価を高精度することを目的に研究を行った。安定同位体組成を用いて植物と土壌微生物の寄与を区別するためには、大気中の硫化カルボニルの硫黄同位体組成の変動だけでなく、植物・土壌微生物が硫化カルボニルを分解する際の同位体分別係数を模擬実験で決定することが必要となる。しかし、これらの実験を行うためには、大気中に500pptvと微量にしか存在しない硫化カルボニルの捕集・濃縮方法の開発に加え、硫化カルボニルを精製する手法の確立が必要であった。そこで、今年度は大気中の硫化カルボニルの硫黄同位体組成測定法の確立・測定に加え、微生物が硫化カルボニルを分解する際の同位体分別係数を決定することを行った。以上の成果を国内学会2件で発表した。今後、国際学会で1件、国内学会で1件発表予定である。 来年度は植物による硫化カルボニル分解から実際に森林域スケールにおける一次精算量を推定する。この研究で得られる成果は一次生産量評価の高精度化を意味し、学術的な重要性が極めて高い。一次生産量評価の高精度化は、最も不確実性の高い気候炭素循環フィードバックのパラメータの高精度化につながるため、CO2濃度や気候変動の将来予測に有用である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最も実験計画上危惧していた大気中の硫化カルボニル捕集法に加え、硫化カルボニルの精製装置も確立することができた。得られた成果をまとめて国際誌への投稿準備を進めている。加えて、微生物による硫化カルボニル分解時の同位体分別係数を決定できた。これは研究実施計画の通りに研究を進めることができている。来年度に植物による硫化カルボニル吸収時の同位体分別係数の決定に加え、夏期に大気観測を実施することで予定していた研究計画を完了することができると予想している。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した装置を森林域に持ち込み夏期に大気観測を実施する。また、同時にブランチチャンバーを用いて植物が硫化カルボニルを分解する際の同位体分別係数を決定することで、森林域スケールでの一次生産量評価の高精度化を行う。
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Research Products
(4 results)