2017 Fiscal Year Annual Research Report
ダイズに潜在する対ハスモンヨトウ抵抗機構の化学的研究
Project/Area Number |
17J08996
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中田 隆 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | ダイズ / ハスモンヨトウ / 誘導抵抗性 / エリシター / プロテアーゼ / 非選好性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ダイズの対ハスモンヨトウ抵抗機構の物質的基盤を化合物レベルで解明することを目的とした。ダイズがハスモンヨトウ幼虫に食害されると、生育阻害活性が報告されているダイゼインを含むイソフラボンが誘導されることが、我々の研究で分かっている。これは誘導抵抗性と呼ばれ、幼虫の吐き出し液(腸管内容物)に含まれるエリシターにより誘導される。また、食べられにくい抵抗性 (非選好性) も知られている。しかし、これらの抵抗性が生じる物質的メカニズムは未だ不明であり、その解明に取り組んだ。 我々は、既に数種類のエリシターを特定し報告しているが、さらに他のエリシターも存在することがわかっていた。そこで、そのエリシターを単離・精製して同定するとともに、誘導されるイソフラボンがどのようにハスモンヨトウに作用するのかを明らかにすることを目指した。エリシターの単離・精製に関して、抽出方法を検討するとともに、分離条件を検討した。特に、活性炭カラムを用いることで効率良く精製できることを見出した。これにより、エリシターの単離・精製が前進した。また、イソフラボンの作用については、ハスモンヨトウ幼虫中腸のプロテアーゼの機能に注目し、ダイズ葉に含まれるプロテアーゼ阻害物質と誘導性イソフラボンの協奏性に着目した。まず、プロテアーゼ活性の評価手法を検討した。ユニバーサルなプロテアーゼ基質である蛍光標識化カゼインを用い、酵素反応に適切な基質濃度・中腸内容物粗酵素抽出量・buffer組成・pH・反応時間・温度を検討した。さらに、マイクロプレートリーダーを用いることで、小スケール化とともに測定の効率化を実現した。これにより、プロテアーゼ阻害物質と誘導性イソフラボンが協奏的に作用するかを検討したが、まだ結論に至っていない。今後は協奏作用の検討に注力する。また、非選好性を評価する実験系を新たに確立し、原因となる物質を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エリシターの単離・精製が大きく前進した。当初はイオン交換カラムやゲルろ過を繰り返し使用する予定であったが、予備実験を重ねることで目的エリシターの物性が予想でき、活性炭で効率よく精製できることが判明した。これにより、当初の計画よりも容易に単離・精製を進められるようになった。プロテアーゼ阻害物質と誘導性イソフラボンの協奏作用については、条件検討を十分に行ったことで、信頼できる評価系を確立できた。しかし、現在も協奏作用の検討を続けており、予定していたモデル化には至っていない。また、非選好性を定量的に評価する実験系の確立できたことで、非選好性の物質的メカニズムの解明が加速した。これにより、非選好性に関わる物質をダイズより同定した。以上の進捗を鑑み、この自己評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、当初の予定通りエリシターの単離・精製およびプロテアーゼ阻害物質と誘導性イソフラボンの協奏作用の検討を続ける。特に後者の検討を進展させる。
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Research Products
(4 results)