2018 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質のバルクリン酸化とその水和効果から理解する分裂期染色体構築機構
Project/Area Number |
17J09002
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山崎 啓也 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | リン酸化 / 分裂期リン酸化 / 定量質量分析 / 染色体凝縮 / 相分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、分裂期移行に伴う染色体関連タンパク質のバルクリン酸化の役割を、DNAとタンパク質が高濃度で存在する環境における、リン酸基周辺の水和効果から解明することにある。採用第2年目の本年は、研究項目1の「分裂期バルクリン酸化の定量解析」および、研究項目3「in vitroクロマチン再構成におけるリン酸化タンパク質のバルク効果の検証」に取り組んだ。 1. 分裂期バルクリン酸化の定量解析 (1-2. 定量的プロテオミクスによる、分裂期バルクリン酸化部位の定量解析) 定量的プロテオミクスによって明らかになった、リン酸化タンパク質に関してgene ontology解析を行ったところ、RNA関連タンパク質が、分裂期リン酸化・脱リン酸化タンパク質の双方に多く含まれていることがわかった。さらには、RNA関連タンパク質は、リン酸化部位を非構造領域により多く持っていることがわかった。 3. in vitroクロマチン再構成におけるリン酸化タンパク質のバルク効果の検証 (3-1. Ki-67の分裂期における機能に与える、バルクリン酸化の影響の検証) 項目1によって明らかになった分裂期バルクリン酸化タンパク質の代表が、細胞増殖マーカータンパク質のKi-67である。Ki-67が中心となって、染色体の周りに液相を形成することが、分裂期染色体における機能に重要なのではないかと考えられている。液滴系での解析により、1) リピートドメインの長さ、2) リン酸化模倣変異数に応じて、相分離能が上昇することがわかった。また、他ドメインとの相互作用および、DNAとの相互作用の検証から、分裂期バルクリン酸化が、Ki-67のリピートドメイン間の相互作用を上昇させ、相分離を促進する一方で、他ドメイン及びDNAとリピートドメインの相互作用を減少させることにより、分裂期染色体周縁部で液相の形成を促進していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、研究課題の第1項目にあたる「分裂期バルクリン酸化の定量解析」および第3項目にあたる「in vitroクロマチン再構成におけるリン酸化タンパク質のバルク効果の検証」に取り組み、来年度に繋がる大きな成果が得られた。質量分析の結果を詳細に解析することにより、RNA関連タンパク質においてリン酸化と脱リン酸化が多く生じている事を明らかにした。それらの多くは、核小体やスプライシングスペックルなどの膜のないオルガネラに含まれており、リン酸化状態の劇的な変化による相転移が分裂期における大規模な形態変化(消失や再構築)の原動力になっていることを示唆する結果として非常に興味深い。さらに、分裂期にバルクリン酸化を受けるタンパク質としてKi-67を見出した。Ki-67は分裂期において染色体周縁部で機能することから、このバルク効果の検証は、分裂期染色体構築機構の関連を明らかにする上で非常に重要である。リン酸化模倣変異体を使用した実験によって、Ki-67が分裂期に染色体周縁で液相を形成し機能するには、バルクリン酸化が重要であるということを支持する知見が得られた。これらの成果は、リン酸化のバルク効果が、分裂期の染色体構造変化に寄与する可能性を大きく押し上げるものであり高く評価できる。今年度に得られた結果は、次年度に引き続き取り組む課題項目の遂行に非常に有用であり、さらに大きな成果が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
「in vitroクロマチン再構成におけるリン酸化タンパク質のバルク効果の検証」を「バルクリン酸化レベル依存性」と「水和の影響」の2方向から行う。前者は具体的に以下の項目により実施する:1. 前年度までに明らかにした「バルクリン酸化レベル」を基準にした、染色体凝縮関連タンパク質のリン酸化、およびリン酸化模倣変異体の作成。2. λDNAとバルクリン酸化コアヒストンの混合による in vitroクロマチン再構成。3. バルクリン酸化された、もしくはバルクリン酸化を模倣する変異を施した染色体凝縮関連タンパク質の、再構成クロマチン、DNAビーズ、染色体凝縮関連タンパク質ノックアウト細胞への導入。4. バルクリン酸化された、もしくはバルクリン酸化を模倣する変異を施した染色体凝縮関連タンパク質の、液滴系におけるタンパク質間、DNA、RNA間相互作用の検証。後者は具体的に以下により実施する:上記のin vitro 再構成クロマチンのDNA凝集における、温度依存性、塩濃度・種類依存性、重水の影響の検証。本年度の必要経費は、生化学用試薬の購入に充てる。研究成果は国内外の学会で報告するとともに、論文として学術誌に投稿・掲載する。
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Research Products
(1 results)