2017 Fiscal Year Annual Research Report
Evolution of the seawater carbonate chemistry and the response of calcification by planktic foraminifera during the last deglaciation
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17J09017
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
岩崎 晋弥 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 海洋酸性化 / 有孔虫 / 炭素循環 / X線CTスキャナ / 炭酸塩 / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、最終氷期以降の海洋酸性化が浮遊性有孔虫の殻形成に与えた影響の復元を目的としている。 平成29年度に得られた研究の成果および実績について以下に記す。 まず2017年地球惑星科学連合大会(千葉県千葉市)において「海洋表層環境が浮遊性有孔虫(G. bulloides)の殻形成に与える影響の評価」というタイトルで成果発表を行った。この成果は、浮遊性有孔虫の殻密度と周辺海水の炭酸イオン濃度が相関することを初めて明らかにしたものである。これは地球温暖化に付随する環境問題である海洋酸性化が海洋炭酸塩生物を代表する有孔虫の殻密度低下をもたらすことを世界で初めて定量的に示した成果である。この研究成果をまとめた論文は、本研究の測定技術の特許出願後に国際誌へ投稿する予定である。また2017年度地球環境史学会(福岡県福岡市)において「南大洋チリ沿岸域における最終氷期以降の深層水炭酸イオン濃度変動の復元」というタイトルで平成29年度に実施した研究成果を発表した。この成果は海洋炭素循環にとって重要な海域である南大洋において最終氷期以降の深層水炭酸イオン濃度の変動を定量的に復元した世界でも初めての研究である。この研究の結果、大気二酸化炭素濃度が上昇したされる最終退氷期において、この海域では深層水炭酸イオン濃度の顕著な変動が起きていたことが初めて明らかにされた。今後は更なるデータ収集および他の研究者との議論を行った上で国際誌への論文投稿を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は高精細3次元計測技術(マイクロフォーカスX線CTスキャナ:MXCT)を利用して環境変動が主要な炭酸塩生物である有孔虫の殻密度に与える影響を定量的に評価する手法の実用化に取り組んでいる。平成29年度は、その第一段階として「有孔虫殻(Globigerinoides sacculiferおよびGlobigerinoides ruber)の無機的な溶解プロセスの解明」という課題に取り組んだ。本研究は産業技術総合研究所(茨城県つくば市)において人為的な殻溶解実験を実施し、その後所属研究機関においてMXCTによる有孔虫殻密度の測定を行った。その結果、各種有孔虫の無機的な殻溶解プロセスが明らかになり、さらにMXCT測定により得られるCT値ヒストグラム(殻密度分布を表す)を利用して殻溶解プロセスの数値化が可能であることを明らかにした。以上のように平成29年度に計画していた実験を予定通り実施し、想定される研究成果が得られたことから本研究の進捗状況はおおむね順調である。現在この研究成果をまとめた論文を執筆中であり、平成30年度中に国際誌への投稿を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度からは南大洋チリ沖で採取された海底堆積物コア試料(MR16-09)の分析に取り組む。南大洋チリ沖は、当初の研究計画とは異なる海域であるが大気海洋間の二酸化炭素交換にとって重要な海域であり、最終退氷期には海洋表層から大気への活発な二酸化炭素放出と海洋表層の酸性化が進行したと考えられている。2017年1月のMR16-09航海で採取した堆積物コア試料は、最終退氷期を高解像度で記録し、さらに有孔虫化石も豊富に含まれていることから、本研究の目的に一致すると判断し、新たな研究試料として利用する。今後の研究計画は、南大洋チリ沖の水深の異なる3地点で採取された堆積物コア試料から最終氷期極大期以降を記録した試料を10サンプルずつ選定し、それぞれのサンプルから浮遊性有孔虫殻(G. bulloides)を20個体ずつ拾い出す。その後MXCTを用いて最終氷期極大期以降の有孔虫殻密度変動を復元する。この研究で得られる成果は、有孔虫殻への海洋酸性化影響復元にとって重要であると同時に、大気海洋間の二酸化炭素循環メカニズムを理解する上でも貴重なデータになると考えられる。また、今後得られる研究成果については随時論文にまとめ学術雑誌に投稿する予定である。
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Research Products
(3 results)