2017 Fiscal Year Annual Research Report
ミリ波放電を用いたマイクロ波ロケットにおける推力生成過程の解明及び性能向上
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17J09280
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 友祐 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | ミリ波 / 放電 / プラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロ波ロケットの推力生成過程を明らかにするため、この過程で重要となる物理現象であるミリ波放電の解明を実験と理論の双方から進めた。 筑波大学にある高エネルギーミリ波発生装置(ジャイロトロン)を用いて低雰囲気ガス圧下での放電実験を行い、構造の変化を調べた。今回の実験で圧力と電界強度によって4つの異なった構造をもつことが分かった。さらにこれらの構造の変換点において進展速度の傾向が異なることも観測された。これまで、これらの構造を別々に観測された事例はあったものの同一の周波数条件における実験で4つの構造があらわれる圧力、ビーム強度の分布を示したものは初めてである。この実験結果から各構造が観測される条件の境界がどこにあるのかが明確になった。 この結果から、このような構造の変化がなぜ生じるのかという疑問が生まれる。本研究において、これらの構造の一つである粒状構造について、数値計算における再現を試みた。フィッテングパラメータ2つを式に組み込むことで、進展速度を実験結果と同じ値に保ったまま電子数密度を変化させ構造の発生条件を調べた。計算の結果、この構造が、プラズマにおける電子数密度がカットオフ密度と呼ばれる入射ミリ波周波数によって決まる密度よりも高い時に現れることを発見した。このことから、拡散構造と粒状構造の境界は電子数密度の変化によって生じることが分かった。 さらに、同じく筑波大学のジャイロトロンを用いて、進展中のミリ波放電プラズマからの自発光に対する分光実験を行った。分光で得られた窒素のスペクトル線を解析した結果、重粒子の振動温度が6000 K程度とこれまで考えられていたものに比べて3倍ほど高温になっていることを発見した。この発見から、ミリ波放電に対しての理解がさらに深まることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミリ波放電を高速度カメラで撮影し、進展中のプラズマが入射ミリ波のパワーと雰囲気圧によって4つの異なる構造をとることが分かった。 上記の構造の一つについて、数値計算により再現し、この構造が、プラズマの密度がカットオフ密度を超えたときのみ現れることを発見した。 ミリ波放電の自発光を分光し解析することで、ミリ波の入射パワーが低い場合に振動温度が6000 K以上に達し、これまで考えられていたものよりも3倍近い温度になっていることが分かった。 このことから、ミリ波放電の進展現象には重粒子の励起温度の上昇が大きくかかわっている可能性が示唆され、今後これを考慮したモデルの構築を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
分光実験の結果から重粒子の振動励起温度がこれまで考えられてきたものよりも高いことが分かった。今後は、この高い重粒子側の温度を考慮した新しいミリ波放電モデルを作成し、実際に数値計算による実験の模擬を行うことでモデルの検証を行う。ミリ波放電現象の数値計算による模擬が成功した後は、出来た数値計算コードをもちいてマイクロ波ロケットの推力生成を模擬し、推進器の最適設計を行う。
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Research Products
(3 results)