2017 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロキャビティ構造をもつ有機電界発光素子によるレーザー発振への挑戦
Project/Area Number |
17J09357
|
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
土器屋 翔平 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
Keywords | 有機マイクロキャビティEL素子 / 有機EL素子 / 有機半導体レーザー / 光子-励起子相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
電流励起有機半導体レーザーの開発に向けて,光子-励起子相互作用によるレーザー発振のアプローチから研究に取り組んでいる.本年度は有機薄膜の励起子モードと共振器光子モードが強結合した共振器ポラリトンの状態の生成を目的とし,マイクロキャビティ構造をもつ有機EL素子の作製と評価を行った.マイクロキャビティ素子は正孔輸送層に5,5’-bis(4-biphenylyl)-2,2’-bithiophene (BP2T)を,活性層/電子輸送層にBP2Tの分子両末端をシアノ基置換した5, 5’-bis(4’-cyanobiphenyl-4-yl)-2,2’-Bithiophene (BP2T-CN)を,正孔注入層に酸化モリブデンを真空蒸着により積層し,それらを金陽極とITOコートした分布ブラッグ反射型(DBR)ミラー(R >99.5%)で挟み込んだ構造とした.ハロゲン-重水素ランプを光源に用いた角度分解反射スペクトルにおいて,DBRミラーの高反射帯域中で入射,および反射角度の増加に伴い,活性層のBP2T-CNの励起子モードに漸近する,高エネルギー側にシフトするディップの分散が室温大気下で確認された.1つの共振器光子モードと2つの励起子モードの強結合における現象論的ハミルトニアンを用いた解析から,250 meV程度の大きな真空ラビ分裂エネルギーが得られた.また, BP2T-CN膜の膜厚に増加に伴い,真空ラビ分裂エネルギーや発光スペクトルの半値全幅,負のデチューニングの大きさの増加が確認され,作製したマイクロキャビティが強結合状態において機能することが分かった.さらに,同素子の角度分解PL,ELスペクトルにおいて,反射スペクトル測定結果に対応する,LPBのピークの分散を観測しており,電流励起下においても励起子ポラリトンの生成が示唆された.本研究結果は現在,原著論文の投稿準備中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の実施計画に挙げた,マイクロキャビティ素子の作製と評価に関して,角度分解PLおよび反射スペクトル測定から,光励起下での励起子ポラリトンの生成が観測され,そのキャビティ長依存性も確認されており,当初の目的を達成した.角度分解EL測定においては,素子の発光輝度が現状ではまだ十分に至っていないものの,エネルギーの分散が得られており,当初の計画がほぼ順調に計画が進展していると思われる.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで,片面DBR基板を用いたマイクロキャビティ素子の作製と評価に取り組んでいるが,素子はDBRミラーと金陽極からなるハーフキャビティ構造を用いており,共振器のQ値は147程度と小さい.そこで,次年度ではITO/DBR基板上に真空蒸着した有機膜の上にITO陽極およびSiO2とTa2O5から構成されるDBR多層膜を酸化物スパッタリング装置を用いて作製する.最初の段階として,両面DBRのフルキャビティ構造をもつ素子から,高密度光励起によるレーザー発振について取り組む.また,有機層は真空蒸着膜を用いているため,発光増幅に必要な利得係数が小さいと考えられる.その際は,本年度に並行して取り組んだ蒸着膜転写法により,結晶性薄膜を導入することを検討している.さらに,電流励起下における熱や素子のダメージや励起子相互作用による光失活を防ぐために,絶縁膜を導入した素子構造の改善や極短パルス電圧駆動による測定を行い,電流励起下における発光増幅を目指す.
|